2023 Fiscal Year Research-status Report
不撹乱黒ボク土の溶質移動:イオン交換反応に着目した水・硝酸態窒素の移動現象の解明
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23K05448
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
徳本 家康 佐賀大学, 農学部, 准教授 (80445858)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
取出 伸夫 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (70212074)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 黒ボク土 / 溶質移動 / 団粒構造 / 乾燥密度 |
Outline of Annual Research Achievements |
I. 大型カラムを用いた溶質移動実験: 恒温室において,大型不撹乱土(直径 30 cm, カラム長 100 cm)を用いた溶質浸透実験を実施した.基礎データとして,飽和条件において上端から異なる水分フラックスを与え,団粒内外の溶質混合メカニズムの解明に向けた実験を集中的に行った.
II. 小型カラムを用いた溶質移動実験:不撹乱土を採取する場合,表層および下層土壌には乾燥密度分布が存在することが明らかとなった.根域層よりも深い下層土では,乾燥密度が0.5 g/cm3程度と低いのに対して,表層付近では農作業などの影響により,乾燥密度が0.7~0.95 g/cm3程度と高い.そのため,本年度には,異なる乾燥密度が溶質移動に与える影響の解明も試みた. 以上の成果は,国内外の論文および学会発表で報告した.とくに,「大型カラムを用いた溶質移動」における溶質分散現象に関して,PAWEESで優秀ポスター賞を受賞し,また「黒ボク土の変異荷電を考慮した溶質移動」においても,土壌物理学会で優秀ポスター賞を受賞した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大型カラムを用いた不撹乱土の採取までには至っていないが,大型カラムおよび小型カラムを用いた溶質移動実験を実施できているため,比較的順調に研究を実施できている.
不撹乱土採取では,実験上の制約などから異なるサイズのカラムにおける不撹乱土採取を試みる予定である.飽和溶質移動実験により,団粒内外の溶質混合メカニズムを解明するため,移流分散式に加えて,動相・不動相モデルを用いた検討を進めている.
肥料成分の溶質移動に関しては,HP1モデルを用いて,黒ボク土の有する変異荷電モデルの構築を進めた.変異荷電の有無を比較することで,硝化過程における硝酸態窒素の形態変化,イオン交換および下方浸透の違いを推定した.
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Strategy for Future Research Activity |
大型カラムを用いて,不飽和条件における溶質移動を行うため,新たに回転式降雨装置を設計・製作した.降雨装置を用いて,不飽和条件における分散係数の水分量および間隙流速の依存性に関して明らかにする.その上で,上端から窒素肥料成分の溶液を与えることで,実験による硝酸態窒素の移動に関して検討する. さらにpH依存荷電の多い黒ボク土中の溶質移動が難解な点は,土壌溶液中のイオン成分の電荷,価数,濃度,pH,黒ボク土の陰イオン交換容量によってNO3-Nの下方浸透量が変化する.HP1モデルを駆使して,団粒間の早い流れとともにNO3-Nが「いつ」,「どれほど」下方浸透するかを明らかにするには,土壌溶液中のイオン成分・濃度(溶存態)を測定する予定である.
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Causes of Carryover |
独立形成基盤により追加された財源を用いて,新規に大型カラムや備品を購入したため。次年度において,不撹乱土採取のための必要備品や消耗品を購入する予定である。
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