2023 Fiscal Year Research-status Report
近赤外~遠赤外分光とそのイメージングを用いた欠乏過剰対応水ストレス指標の提案
Project/Area Number |
23K05461
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石川 大太郎 東北大学, 農学研究科, 准教授 (20610869)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 水ストレス / 近赤外分光 / 遠赤外分光 / セルロース |
Outline of Annual Research Achievements |
植生の水ストレスは、可視・近赤外(400-1100nm)領域の反射スペクトルを用いているが、この領域を利用した評価は、クロロフィルバンドの変化を介した間接的なものであった。近赤外・赤外領域のスペクトルは、水を直接検出するバンドが存在し、非破壊計測分野では指標として考案されているものがあるが、そのスペクトル挙動自体を詳細に検討した事例は多くないうえ、過剰ストレスに対応した水ストレス指標はまだ開発されていない。そこで、本研究では、過剰水分にも対応する分光的水分評価指標を開発することを目的として、近赤外分光と赤外分光を併用した解析を実施している。本研究の独創的な点は植物葉の主要な成分であるセルロースをキー物質として分光学的手法による検出を目指している点である。2023年は、基礎的な評価として、デンプン系素材の水分活性を変えることで、スペクトル挙動の解析を行い、特に900-100カイザー付近の遠赤外領域を用いた検討を行った、その結果、水分量が増加するにつれて水に由来すると考えられるベースラインの変動が認められた。デンプン系素材に対して、この領域のPLS回帰モデルを構築した結果、水分活性と有意な相関が認められ、水分量そのものに関しては、高水分域で検量線が飽和する可能性が認められた。この結果は、水分量の増加による検量線のさらなる詳細なスペクトル挙動との検討が必要であると考えられるが、遠赤外領域での水分評価の可能性を言及することに成功した。2024年度は、セルロースと水分の関連性を遠赤外領域を中心として、検証し水分過剰/欠乏ストレス構築の可能性について明確化していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度は、基礎的なデータの取得を目的としており、特に900-100cmの領域において、水分推定が可能であることを明らかにできた。PLS回帰モデルのローディングプロットを評価しても、デンプン系素材に対して、900-100cm-1の領域内に水に由来するバンドの寄与が高いことを示唆することに成功しており、研究自体はおおむね順調に進捗していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究二年目では一年目に引き続き、セルロースの収着過程におけるスペクトルを取得することで水分ストレス評価法について検討する。測定は減衰全反射法で行うこととする。セルロースでは、赤外領域では、3300 cm-1 付近の OH 基のピークと、1200-800 cm-1 付近のグルコース環やグリコシド結合が重なりあったバンドが出現すると考えられることから、これらのバンドに加え、900cm-1以下のスペクトルに出現するバンドの意味づけを行い、水と固体状態の相互作用から、評価手法としての有効性を検証する。また、近赤外領域では面的な収着挙動の明確化を目指して、イメージングによるデータ取得と解析にも取り組む予定である。イメージング装置は我々が開発したものを用い、セルロースから個葉へのスケールアップの検討も一部実施していく予定である。
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Causes of Carryover |
研究初年度は、異動先研究室において、消耗品および試薬等を使用することが可能であったこと、物品の購入額が当初予定より抑えられたことから次年度への繰り越しが可能となった。繰り越し分は、研究成果報告のための英文校正費用、投稿費用等に充填することを予定し効率的な活用により、研究成果発信の充実につなげる。
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