2023 Fiscal Year Research-status Report
細胞密度を指標とした希少微生物の探索:還元的酢酸生成細菌の選択的培養と多様性評価
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23K05484
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
服部 聡 山形大学, 農学部, 准教授 (40373352)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 還元的酢酸生成細菌 / 密度勾配遠心分離 / 分離培養 / 網羅的菌叢解析 / 多様性評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では無酸素環境下で二酸化炭素を固定する能力を持つ還元的酢酸生成細菌を研究対象として、密度勾配遠心分離により多種多様な当該細菌を細胞密度に応じて選択的に分画・集積し、分離培養により取得することを目的としている。本年度は還元的酢酸生成細菌の生息環境の1つであるメタン発酵消化汚泥を試料として、常法によりゲノムDNAを抽出、16S rRNA遺伝子を用いたアンプリコン解析を行うことにより、当該環境中に生息する微生物菌叢を網羅的に明らかにすることを試みた。また、同試料に密度勾配遠心分離を適用し、最適な密度勾配遠心条件の検討を行った。網羅的菌叢解析の結果、当該環境からRuminococcaceae科やClostridiaceae科といった還元的酢酸生成細菌の分離株が属する系統、あるいはHungateiclostridiaceae科、Omnitrophaceae科など還元的酢酸生成経路(Wood-Ljungdahl pathway)の保有が推定される細菌を含む系統が検出された。また、密度勾配遠心分離の最適条件検討を行った結果、試料の剥離処理後40,000 ×gの条件で遠心分離を行うことで最もスムーズな密度勾配を形成可能なことが明らかとなった。なお、密度勾配遠心分離により得られた密度画分においては、低~中密度画分において最も微生物の集積度合いが高いこと、また、いずれの密度画分にも微生物が存在することも明らかとなった。密度勾配遠心分離は原理的に限界希釈による微生物の損失を抑制することが可能であることから、特定の密度画分を用いることにより当該環境中に生息する希少な還元的酢酸生成細菌の取得率が向上する可能性が考えられた。現在、分画した各々の密度画分を植菌源として、絶対嫌気培地を用いた還元的酢酸生成細菌の集積培養を進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
試料微生物群の網羅的菌叢解析が順調に進んでいること、密度勾配遠心分離の最適条件を確立したこと、また、各々の密度画分からの還元的酢酸生成細菌の集積培養にも着手出来ているため。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き還元的酢酸生成細菌の集積培養を行い、当該細菌の純粋分離を進める。また、各々の密度画分ごとに微生物菌叢解析を行う。
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