2023 Fiscal Year Research-status Report
遠心過重力による緑化芽ばえの成長促進機構の解析: 宇宙農業に向けた基盤研究
Project/Area Number |
23K05496
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
曽我 康一 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 教授 (00336760)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 宇宙農業 / 遠心過重力 / 緑化芽ばえ / 成長促進機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
長期有人宇宙活動において、人類が健全に生存するためには、宇宙において食料となる植物を生産することが不可欠である。地球上と宇宙の環境の違いのひとつは、重力の大きさが異なっていることであり、重力環境の違いが植物の成長に与える影響の解析は非常に重要な課題である。私たちは、最近、ブロッコリー緑化芽ばえの成長が過重力によって促進されることを見いだした。本研究では、過重力による成長促進機構を明らかにすることを目指す。 まず、重力の大きさを5~100 gで変化させたときの芽ばえの成長を詳細に解析した。30 gの過重力までは、重力の大きさが大きくなるにつれて、胚軸の長さは長く、また、直径は大きくなったが、30 g以上に重力の大きさを大きくしても、胚軸の長さや太さに、それ以上の促進はみられなかった。一方、子葉や根の成長に過重力は影響を与えなかった。これらの結果から、胚軸と子葉や根では重力に対する反応性が異なっており、胚軸の成長は重力によって制御されていると考えられる。 植物細胞の成長速度は、細胞壁の物性と浸透物質によって生み出される浸透圧によって、最も直接的に規定されている。過重力環境で生育させた胚軸の細胞壁の物性を測定したところ、1 g対照のものと変わらなかった。一方、過重力によって、胚軸の浸透物質量は増加した。このことから、過重力により浸透物質の蓄積が促進されることによって、細胞の吸水量が増加し、胚軸の成長が促進されたと考えられる。現在、過重力による胚軸の成長促進過程において、発現が変化する遺伝子を同定するために、RNA-seq解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は、成長、細胞壁物性、浸透物質の解析を行った。また、発現が変化する遺伝子を同定するために、RNA-seq解析を行っているところである。芽生えの生育条件の検討を念入りに検討したことにより、RNA-seq解析が当初の予定より若干遅れているが、全体としては、概ね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、RNA-seq解析において同定された遺伝子の役割を検証し、胚軸の成長促進過程の分子機構を明らかにする。また、緑化芽ばえの成長は、光合成活性の影響を大きく受けることから、光合成の量子収率やクロロフィルの量、また、葉緑体の数と大きさを解析し、胚軸の成長促進過程において、光合成活性の制御が関与しているのかを明らかにする。
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Causes of Carryover |
RNA-seq解析を行うためのブロッコリー芽生えの生育条件を念入りに検討したことにより、RNA-seq解析のための試料を受託会社に送付するのが遅くなったこと、また、受託会社がブロッコリー芽ばえを扱うのが初めてであったため、先に、条件検討などを行ってもらったことにより、年度内に解析が終了しなかった。そのため、まだ、支払いを行っておらず、RNA-seq解析のための経費が残っている。解析が終了し次第、この経費を執行する。
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