2023 Fiscal Year Research-status Report
有害捕獲動物の加齢による歯髄腔変化を用いた簡易年齢推定技術の確立
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23K05497
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
進藤 順治 北里大学, 獣医学部, 教授 (80453512)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 年齢推定 / 歯 / 歯髄腔 |
Outline of Annual Research Achievements |
有害動物の個体群管理に実用性のある簡易年齢推定法の構築を目的に、ツキノワグマとアライグマの加齢に伴う犬歯歯髄腔の変化と年輪法によって推定した年齢との関係を検討した。 ツキノワグマ犬歯の非破壊的な年齢推定には、歯科用X線装置を用い、画像より歯頸部の歯髄腔の割合を求めた。歯髄腔の割合は1.5歳以下で40%以上とかなり大きいが、2.5-3.5歳は13-34%、3.5-5.5歳は10-16%程度で加齢に伴い減少していた。6歳以上では10%前後の間で変動し、10歳以降ではほとんどが10%を割っていた。一方、画像の変化として6歳以降では歯髄腔内面に塑像な象牙の増生がみられ、増生により狭小化していた。ツキノワグマの歯科用Ⅹ線装置を用いた簡易年齢は、犬歯の歯髄腔の狭小状況より1.5歳以下の幼獣、2・3歳の若齢獣、4・5歳の若獣、6歳以降の成獣に判別することが可能と示唆された。 一方、アライグマに関しては、20個体のオスの犬歯を縦断面に研磨し、歯頸部と歯槽部最大幅の歯髄腔の占める割合を算出した。1歳以下の歯髄腔の割合は、歯頸部で30.6-41.9%、歯槽部最大幅で49.3-62.6%、2歳は歯頚部24.0-36.6%、最大幅35.2-41.7%、3歳は歯頚部20.9-30.8%、最大幅29.3-32.1%と加齢とともに歯髄腔は縮小していたが、4歳齢以降では大きな変化は見られなかった。犬歯の歯槽部最大幅の歯髄腔割合から1歳以下、2歳、3歳でそれぞれ明確な違いがみられ年齢の判別が可能であるが、4歳以降では歯髄腔の割合に違いがなく、年齢を判別することができなかった
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ツキノワグマの年齢推定に適した歯牙を選定し、歯科用Ⅹ線装置による非破壊的な歯髄腔の観察と計測を行い一定の結果が得られている。また、アライグマに関しても歯髄腔の肉眼的な実測を行い加齢に伴う狭小化を観察している。このことから本研究は概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
ツキノワグマ犬歯のⅩ線画像を用い非破壊的に歯髄腔を計測することにより、加齢に伴う狭小化と年齢との関係が示唆されている。しかし、6歳以降ではあまり変化がみられていないことから成獣の年齢推定を検討する必要がある。X線画像より、歯髄腔の象牙の増生状況が成獣で観察されることから加齢との関連の検討を進める。さらに判別指標を明確化するため有害駆除個体に対して撮影と計測を実施する。また、歯頚部の歯髄腔の割合から年齢推定が可能であることから、犬歯の外貌や歯頚部の切断面などから歯科用Ⅹ線装置を用いない簡易年齢推定法を導くことを検討する。 一方、アライグマに関しては、縦断面の研磨標本から最大歯髄腔径の割合を基にⅩ線撮影を行い、加齢による画像の変化傾向を探る。
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Causes of Carryover |
主にⅩ線撮影を実施しており、年輪法による標本作成が少なかったため、次年度に染色液やや標本作成のための備品に充てる。
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