2023 Fiscal Year Research-status Report
野生動物の警戒行動の定量的評価ー動物種差と対象物の視覚刺激の影響ー
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23K05498
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Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
加瀬 ちひろ 麻布大学, 獣医学部, 講師 (60738772)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江口 祐輔 麻布大学, 生命・環境科学部, 教授 (60367240)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 新奇物反応 / 警戒行動 / 視覚刺激 / 野生動物管理 / 行動の種差 / 心理的行動制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、新奇物の形状が警戒行動に及ぼす影響を評価するため、野生個体および飼育個体を対象とした調査を実施した。野生個体を対象とした調査は、島根県美郷町内野外10地点にて約3カ月間実施した。10地点中9地点でデータを得ることができ、そのうち新奇物に対する初期警戒反応のデータ解析に用いられるものは、シカ2頭、イノシシ20頭(成獣・幼獣含む)、タヌキ11頭、アナグマ4頭分であった。新奇物の形状による比較分析を行うにはデータ数が不足しているため、神奈川県内12地点で追加調査を実施中である。 飼育個体を対象とした調査では、キョン6頭を対象に新奇物の形状が初期警戒反応から慣れまでに、どのように影響するかを評価した。その結果、キョンはいずれの新奇物に対しても明確な警戒行動を示さず、形状の違いによる警戒反応の差が見られなかった。また、形状ごとに新奇物提示から18時間の行動観察を実施したが、行動の経時的変化はほとんど見られなかった。先行研究では、イノシシは新奇物に対して明らかな警戒行動を示し、慣れるまでに一定の時間を要していたが、アナグマではほとんど警戒行動を示さず明らかな経時的変化は見られなかった。本研究で見られたキョンの新奇物に対する反応は、アナグマと同様の経過を辿ったことから、初期警戒反応から慣れまでの過程の動物種差と同一性の確認ができた。キョンに関してはまだ野生下での初期警戒反応分析ができていないため、今後は野生下で取得したデータと照らし合わせることで、動物種としての行動特性であることを確認する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
野生個体を対象とした調査データは想定よりも収集できなかったが、初年度に予定していた調査は問題なく進められたため。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、野生個体を対象とした調査を中心に進め、新奇物の形状による比較ができるだけのデータを収集・解析する。また次のステップとして、野生下・飼育下の両方で新奇物を提示する高さの影響調査を実施するための準備を進める。
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Causes of Carryover |
初年度の野外調査で用いるセンサーカメラが途中で2台破損したため、予備も含めて追加購入した。また、当初は手持ちの充電池を使用していたが、使い切りの電池でないと電圧が十分でない場合があったため、予定になかった電池の購入が生じたため、物品費での支出があった。2024年度は、データ解析に必要な人件費を節約し、2023年度に追加で使用した金額を差し引いて運用する。
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