2023 Fiscal Year Research-status Report
ゲノム編集による高消化性暖地型イネ科牧草の作出とその遺伝子拡散リスク評価
Project/Area Number |
23K05524
|
Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
権藤 崇裕 宮崎大学, フロンティア科学総合研究センター, 助教 (10437949)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
Keywords | ゲノム編集 / CAD / リグニン / 消化性 / ヌル分離個体 / k-mer解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、CAD遺伝子をゲノム編集によりノックアウトすることで、牧草のリグニン含量やその構造および消化性がどの様に変化するのか、明らかとし、新規育種素材の開発を目指す。また、作出した変異体は、隔離圃場で栽培し、ゲノム編集による変異体の遺伝子拡散や野生種への遺伝的構造の影響について、これまでの関連研究で触れられてこなかった生物多様性影響へのリスクについて評価する。 本年度は、(1)CAD変異遺伝子座のホモ化において、導入ベクターが除去されたヌル分離個体5個体(M1世代)について、放任受粉し、M2世代40個体を用いてCAD遺伝子座を調査した。その結果、ホモ型変異が11個体、ヘテロ型変異が20個体、変異なしが9個体に分離し、変異遺伝子座が分離の法則に従い安定的に遺伝することを明らかとした。 (2)上記の分離集団(CADホモ型変異体、ヘテロ型、変異なし型)におけるリグニン含量およびその構造の解析では、リグニン含量はホモ型が最も低く、次にヘテロ型、変異なしと含量が高かった。S型およびG型のリグニンモノマーの量は、リグニン含量と同じ傾向を示し、ホモ型が最も低いものの、その比率は3つの分離集団で差がなく、リグニン構造の変化は認められなかった。 (3)分離集団の形態および消化率について、ホモ型は形態に異常がなく、乾物生産性も変異なし型と同等であり、消化性も向上していた。 (4)k-mer解析による外来遺伝子の検出では、PCRベースで確認したヌル分離個体5個体について全ゲノム情報を高速シーケンサにより収集し、導入ベクターのゲノムへの挿入を確認した。その結果、2個体で外来遺伝子の挿入が確認されたことから、M2世代において外来遺伝子の存在の可能性があると判断された。現在、上記のベクターが完全に除去された個体同士を放任受粉させ、M2世代を新たに展開し、CADホモ型変異体を選抜している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初2年間で行う形態、リグニン含量、リグニンモノマー、消化性の調査が1年間で完了した。 PCRベースで確認したヌル分離個体(M1世代)を用い、それを放任受粉してM2世代を展開したが、k-mer解析によりヌル分離個体に断片化した外来遺伝子が残存していることが発覚した。 現在は、k-mer解析の結果、外来遺伝子が完全に除去されたヌル分離個体3個体を放任受粉させ、M2世代を新たに展開し、CADホモ型変異体を選抜しており、おおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在、外来遺伝子が完全に除去されたヌル分離個体を放任受粉させており、今後は、新たに得られたM2世代よりCADホモ型変異体を選抜する。さらに、ホモ型変異体同士で放任受粉することで、大量に種子を生産し、CADホモ集団を作成する。また、次の隔離ほ場での栽培試験に向けて、実験計画書を作成し、主務大臣に提出する。
|
Causes of Carryover |
本年度は、研究期間の1年目であり、研究を遂行することを優先して、予定していた学会に出席しなかった。次年度は、論文投稿料および学会出席費で使用する予定である。
|