2023 Fiscal Year Research-status Report
Functions of plant propagule banks for the resiliency on natural revegetation in native grasslands slidden by natural disasters
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23K05528
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
岡本 智伸 東海大学, 農学部, 教授 (70248607)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樫村 敦 東海大学, 農学部, 准教授 (10587992)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 半自然草原 / 斜面崩壊 / 植生遷移 / 散布体バンク / 種子散布 / 生物多様性 / 土壌 / 自然災害 |
Outline of Annual Research Achievements |
斜面崩壊した阿蘇地域の野草地において,植生が自然回復する遷移過程での生物および非生物的環境要因について定点調査を実施した。深度60 cm~80 cmの黒色土層内で崩壊した斜面(浅表層崩壊区)および深度150 cm~200 cmの黒色土層とその下層の褐色土層との境界付近で崩壊した斜面(深表層崩壊区)を調査区として設定した。両区間において,植物種組成,植物地下部現存量,哺乳類排糞中種子などについて比較調査した。 根茎連結体を有する地下器官R1-3型植物種の積算優占度組成割合において,両区ともに崩壊後11年目まで大きな差は無く推移した。また, R1-3型植物種の組成割合は対照区(隣接する非崩壊植生)との間にも浅表層崩壊区での崩壊後2年目と4年目以外は,有意差が認められなかった。一方,地下器官の散布体で休眠する地中植物(G)および半地中植物(H)の優占度は浅表層崩壊区では深表層崩壊区よりも有意に高く推移した。深表層崩壊区でのG・Hの優占度は崩壊後10年においても対照区の7割弱であったが,浅表層崩壊区では対照区と有意差の無い水準まで向上していた。地下器官の現存量は,浅表層崩壊区では深表層崩壊区よりも崩壊後年数を通じて2倍以上高い傾向を示した。 動物により種子散布される植物種は両区において合計13種出現した。これらの植物の優占度は,深表層崩壊区において高い傾向にあった。 崩壊深度が浅く表土の残存量が多い環境においては,地下器官散布体の残存量も多く,植生の回復速度も速いことが予測された。一方,崩壊深度が深く表土の残存量が少ない環境においては,植生回復において動物等による種子散布に依存する割合が高くなることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
阿蘇地域の野草地では,歴史的に豪雨などによる斜面崩壊に伴いパッチ状に植生が失われることが繰り返されている。本研究ではこれらの崩壊植生が自然回復していく過程において,土壌中に保持される散布体の質と量が遷移の速度と方向性に及ぼす影響に着目する。 今年度は,試験地として崩壊土層深度の異なる斜面崩壊地を設定し,植物の生活型組成,植物地下器官の発達,土壌の理化学性,群落内の光環境,野生動物による種子散布などを継続調査した。研究初年度として設定した調査項目について,ほとんど遂行することができた。また調査項目相互の関連性についても解析に着手することができた。 以上の様に,今年度に計画した研究内容はほぼ遂行し,次年度の研究計画につなげることができたと判断した。しかし,当初発表予定していた学会大会が延期となり,成果の公表を遂行できなかった。この点からやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は「①基盤項目」「②発展項目」「③統合項目」の3つから構成される。「①基盤項目」では,崩壊した土層位や深度の影響の視点から,野草地植生の自然修復における定点長期動態を解析する。「②発展項目」では,植生の自然修復の速度と方向性におよぼす土壌中散布体バンクの影響を解析する。さらに「①基盤項目」で得られた結果を基に,植生再生の進行(遷移)段階において再生源となる,新たに供給される散布体の推移について調査する。これら二つの研究項目において,植生の再生過程の把握とそこに影響する要因を明らかにすると同時に,野草地生態系における植物種組成の更新と生物多様性の維持に対する斜面崩壊の位置付けを考究する。 「①基盤項目」においては,植物種組成,植物地下器官の発達,土壌の理化学性,群落内の光環境,土壌中の散布体バンク,野生動物による種子散布などを継続的に調査する。そしてこれらの時空間的な蓄積データを用い,要因間の相互関係を多変量解析などにより解釈することで,植生の自然修復の動態を検討する。一方,「②発展項目」においては,植生の自然修復の速度と方向性に及ぼす散布体バンクの影響や各遷移段階において供給される散布体の推移を調査しデータを蓄積する。最終年度に「③統合項目」として,これらが及ぼす植生再生や植物種組成への影響を空間軸と時間軸に従い統合的に解析する。最終的には,畜産資源として重要な野草地が被災後にどのようなプロセスで自然修復していくのかを解明し,低投入で持続的に資源供給が得られる野草地の適正な管理技術についての知見を得る。
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Causes of Carryover |
成果発表を予定していた学会大会が次年度に延期となり,学会参加に計上していた出張経費を計画的に繰り越した。また,今年度実施した地下散布体の採取においは,現有タイプの消耗器具で遂行でき,計画していた新たなタイプの器具を購入する必要が無かった。ただし,次年度の調査にはこれら購入が必要であるため,その経費を次年度に繰り越した。この様に,今年度繰り越した予算は,次年度の計画において繰り越して出張や物品購入に支出が必須な経費である。
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