2023 Fiscal Year Research-status Report
多様化した高病原性鳥インフルエンザウイルスの哺乳動物に対する病原性の解析
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23K05536
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
笛吹 達史 鳥取大学, 農学部, 准教授 (80508482)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 高病原性鳥インフルエンザ / マウス / 哺乳動物 |
Outline of Annual Research Achievements |
高病原性鳥インフルエンザウイルス(HPAIV)は、世界各地で野鳥から検出され、日本でも毎年のように家きん農場におけるHPAI発生が確認されるようになった。これまでも、HPAIVに感染した家きんや野鳥から人への感染事例が認められてはいたが、最近では、哺乳動物の感染報告が以前に比べて明らかに増加し、鳥インフルエンザウイルスと哺乳動物の間の壁が徐々になくなっていることを示している。2024年には国外で、乳牛のH5N1亜型HPAIV感染が確認され、牛から牛、牛から猫や人への伝播の可能性も指摘されている。野鳥に定着したHPAIVは家きん産業上の問題であるとともに、その哺乳動物に対する感染性の変化は、公衆衛生上きわめて深刻な問題として実態を早急に明らかにすべきと考える。 本研究では、これまで国内に侵入したHPAIVのマウスに対する病原性を評価し、その変化の実態を解明することを目的としている。マウス感染実験の実施の前段階として、候補ウイルスの一部について感染価を測定した。また、新たに国内に侵入するHPAIVの発見のため、2023年10月から2024年3月までの期間に鳥取県内の渡り鳥飛来地において採取した水鳥糞便493検体および環境水16検体を対象に、鳥インフルエンザサーベイランスを実施した。水鳥糞便5検体が鳥インフルエンザウイルス陽性を示したが、いずれの株も低病原性であった。 本研究で実施した調査では、新たに国内に侵入したHPAIVの発見には至らなかったが、日本国内では、家禽農場でのHPAI発生11事例のほか、死亡野鳥155事例(5月9日時点)、飼養鳥2事例のHPAIV感染が報告されており、H5N1亜型、H5N5亜型、H5N6亜型ウイルスの国内侵入が認められている。今後はこれらのウイルスも対象に含めて、マウス感染実験により病原性を評価する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度の国内野鳥の死亡事例が多数発生し、新たなウイルス株の確保に成功した一方で、ウイルス分離作業と保管作業のための業務が増えたこと、また、感染実験設備の利用状況から、初年度の冬季に実施する予定だったマウス感染実験を、次年度に実施することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画2年目の前半に、初年度冬季に延期したマウス感染実験を積極的に推進する。感染実験に併行して、インフルエンザウイルスの全ゲノム塩基配列を決定するための分子学的手法を確立し、新たに取得した高病原性鳥インフルエンザウイルス野鳥分離株のゲノム情報を決定するとともに、マウス感染実験で得たマウス感染ウイルスの感染前後のゲノムを比較し、変異導入の有無について検証する。
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Causes of Carryover |
国内での高病原性鳥インフルエンザ発生に係る調査等への対応のため、初年度の冬季に実施する予定だったマウス感染実験を、次年度に延期し、次年度使用額が発生した。次年度となる研究2年目の前期に、延期した感染実験を積極的に推進するとともに、2年目実施予定の感染実験も継続してすすめ、進捗管理に務める。
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