2023 Fiscal Year Research-status Report
養鶏場における抗菌薬耐性菌の存続に関連する要因の特定による抗菌薬耐性菌対策
Project/Area Number |
23K05568
|
Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
村瀬 敏之 鳥取大学, 農学部, 教授 (20229983)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
Keywords | 抗菌薬耐性 / 大腸菌 / 鶏 |
Outline of Annual Research Achievements |
採卵鶏農場(1農場)の飼養環境から分離された大腸菌378株についてパルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)パターンをもとに遺伝的に近縁でない株を選抜し、第3世代セファロスポリンとしてセフチオフル、キノロン系薬としてナリジクス酸及びエンロフロキサシンを用いて薬剤感受性試験を実施し、各薬剤に耐性を示す菌株の特定を試みた。セフチオフル耐性株は存在しなかったため、β-ラクタム系薬のアンピシリンを用いて薬剤感受性試験を実施したところ耐性と判定された株が得られたため、このうち50株について耐性遺伝子blaTEMの保有を検討した。その結果、23株において本遺伝子が確認された。エンロフロキサシンに対する感受性が減弱していた菌株及び耐性株(最小発育阻止濃度が0.25 mg/mL以上)について、プラスミド媒介性キノロン耐性(plasmid-mediated quinolone resistance, PMQR)遺伝子の保有を検討した、その結果、4株においてqnrS遺伝子が確認された。肉用鶏農場(4農場)の大腸菌症例から分離されたPFGEパターンがたがいに異なる31株のうち、18株がセフチオフルに耐性で、blaCTX-M-2, blaCTX-M-14, blaCTX-M-65もしくはblaCMY-2を保有していた。これらのうち3株がPMQR遺伝子のうちaac(6’)-Ib-crを、また他の1株がoqxABを保有していた。エンロフロキサイシン耐性株ではgyrAまたはparC遺伝子のキノロン耐性決定領域にアミノ酸置換を伴う塩基配列の変異が認められた。以上の通り、採卵鶏農場由来大腸菌分離株では基質拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生株は認められなかったが、肉用鶏大腸菌症由来株には多数認められた。PMQR陽性株はいずれの群においても分離頻度は低かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
採卵鶏農場由来株においてセフチオフル耐性株が認められなかったため、改めてアンピシリンを用いた感受性試験を実施する等計画の変更をする必要があったことから、当初の計画より進捗がやや遅れる結果となった。採卵鶏の大腸菌症由来株と健康な肉用鶏由来株を供試する必要があったが上記理由により実施に至らなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
採卵鶏の大腸菌症由来株と健康な肉用鶏由来株を供試し、当初の計画通りβ-ラクタマーゼ(bla)遺伝子及びプラスミド媒介性キノロン耐性(plasmid-mediated quinolone resistance, PMQR)遺伝子の有無、染色体上のキノロン耐性決定領域の塩基配列の決定を行う。また、PMQR陽性株は少ないので、同じ農場で調査を行った際に分離されたサルモネラについてPMQR陽性株の存否を検討することとする。
|
Causes of Carryover |
納入額が当初見込んだ額より安価であったため次年度使用額が発生した。ただし、次年度使用額は次年度交付予定額の5%以内であることから、合わせて使用することが可能である。2023年度の成績を踏まえ、次年度の研究計画を一部変更するものの、本研究課題を実施することが可能である。
|