2023 Fiscal Year Research-status Report
広宿主域アデノウイルスを用いたアデノウイルスの宿主域決定機構の解明
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23K05571
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
下田 宙 山口大学, 共同獣医学部, 准教授 (40719887)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | アデノウイルス / 宿主域 / 人獣共通感染症 |
Outline of Annual Research Achievements |
一般的にアデノウイルスは宿主特異性が高いことが知られているが、米国で肺炎を呈したスカンクより初めて分離されたスカンクアデノウイルスは霊長類であるマーモセットを含む様々な動物に感染することが報告されている。本研究ではスカンクアデノウイルスを用いてアデノウイルスの宿主域決定分子機構を明らかにすることを目的としている。 本年度は各種培養細胞におけるスカンクアデノウイルスに対する感受性の評価および受容体候補分子のノックアウト細胞や強制発現細胞を準備した。広く用いられているイヌ、ハムスター、ネコ、サル、ヒト、ブタの細胞に加えて、オリジナルのハリネズミやトラの細胞を用いて増殖性を評価した。その結果、イヌ、サル、ヒト、ブタ、ハリネズミ由来の培養細胞ではウイルスの顕著な増殖が認められた一方で、ネコ、トラ、ハムスター由来の培養細胞ではほとんど増殖が認められなかった。多種の動物で本ウイルスの感染が認められているのと一致し、in vitroでも多様な細胞に感染することが明らかとなった。 また、受容体候補分子であるCXADRおよびCD46についてCRISPR/Cas9システムを持ちいてノックアウト細胞を樹立、各種動物由来のそれら分子の強制発現細胞を樹立するためのプラスミドを作製した。CXADRノックアウト細胞では本ウイルスの増殖性は顕著に低下したため、CXADRは本ウイルスの受容体として機能している可能性が考えられた。 一方で、CD46ノックアウト細胞では増殖性に変化が認められなかったことから本ウイルスの受容体としては機能していないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画書のロードマップで令和5年度に実施予定であった各種細胞におけるウイルス感受性の評価は概ね完了している。また、令和6年度にかけて実施予定のアデノウイルスの増殖に重要な細胞側の分子の同定についても、受容体候補分子のノックアウト細胞や強制発現細胞の準備は順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
作製した受容体候補分子のノックアウト細胞や強制発現細胞を用いて各種アデノウイルスの増殖に重要な細胞側分子(令和6年度中)および宿主特異性に関わるウイルス側分子の同定(令和7年度前半まで)を進めていく。得られたデータを統合して、アデノウイルス全体の宿主域決定分子機構を明らかにする。
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Causes of Carryover |
培養細胞を用いる実験において必要不可欠な牛胎児由来血清(FBS)はロットチェックが必要不可欠であり、本年度は研究開発前より使用していたロットをそのまま使用した。培養する細胞種が大幅に増加すると予測される次年度以降に必要なFBSを同一ロットで大量に購入するために消耗品費についても繰り越した。
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