2023 Fiscal Year Research-status Report
豚デルタコロナウイルスに対する制御手段の早期開発に向けた新たな研究ツールの確立
Project/Area Number |
23K05582
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
鈴木 亨 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究部門, 上級研究員 (10362188)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 豚デルタコロナウイルス / 遺伝子改変技術 / 感染モデル / 小型動物 / 遺伝子機能解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、豚で新たに発見された下痢の主原因となる豚デルタコロナウイルスに関して生産現場では有効な手段がなく、本病の対策に苦慮している。さらに最近、本ウイルスは豚以外に牛やヒトに対して感染性を有することから公衆衛生上高い注目を集めており、他の動物へのさらなる感染拡大防止に向けて速やかにワクチンを開発することが望まれている。しかしながら、豚を用いた感染実験は特殊な施設や設備に加えて、膨大な費用と労力を要するために実施が困難であり、本ウイルスの遺伝子機能や感染機構は未解明のままである。本研究では発見からまだ日が浅く未解明な点が多い本ウイルスを対象にワクチン開発に向けた遺伝子機能および感染機構の解明を加速化するための研究ツールとして、本ウイルスの遺伝子改変技術と省力性や操作性、安全性に優れた豚以外の小型動物を用いた感染モデルを確立する。 すでに経験済みである豚流行性下痢ウイルスの遺伝子改変技術と同様に、豚デルタコロナウイルス国内分離株の完全長ゲノムをBACクローニングベクターに挿入し、環状DNAを構築した。その環状DNAをHuH7細胞に導入して継代した結果、本ウイルスの人工合成に成功した。加えて、人工合成した株と元株との間で遺伝子配列や細胞での増殖性などを精査した結果、人工合成した株は元株を再現できていることを実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は豚デルタコロナウイルスの遺伝子改変技術と省力性や操作性、安全性に優れた豚以外の小型動物を用いた感染モデルを確立することであるが、2つのうちの遺伝子改変技術の確立をすでに達成したため。
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Strategy for Future Research Activity |
豚デルタコロナウイルスの自然宿主である豚に代わって省力性や操作性、安全性に優れたマウスやハムスターなどの小型動物の中から豚と同様の感染動態を示すモデル動物を探索する。本ウイルスの受容体であるアミノペプチダーゼNの発現が確認・報告されているマウスやハムスター等に豚デルタコロナウイルスを経口的に接種し、その後の臨床症状や糞便・血清中におけるウイルス排泄動態等の観察・解析を通じて、最適な感染モデル動物を見出す。
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