2023 Fiscal Year Research-status Report
ウイルス由来遺伝子の獲得・機能進化による胎生哺乳類胚発生システムの進化
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23K05588
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
志浦 寛相 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (10451907)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ウイルス由来遺伝子 / PEG10 / 哺乳類進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
PEG10は卵生の単孔類と胎生の有袋類・真獣類の分岐後に感染し たウイルスが起源となって獲得された新規遺伝子であると考えられている。我々はノックアウト(KO)マウスを含む複数のミュータントマウスの解析から、Peg10が真獣類独自の発生システムに必須な胎盤の形成に不可欠な遺伝子であることを明らかにしてきた。しかし、PEG10が「胎盤以外でも胎仔や脳などで発現がみられること」「有袋類でも保存されていること」を考えると、その機能は胎盤形成にとどまらず真獣類・有袋類で広範に保存されている可能性が高い。我々はそれら機能が「有袋類・真獣類の胚発生システムの成立および進化に大きな役割を果たした」といった仮説を検証することを目的として、PEG10機能を明らかにするための各種解析を実施している。 そのようなPeg10の未知機能を明らかにするためには、各種Peg10ミュータントマウスを作製しそれらでみられる異常の詳細を知ることが必須であると考え、今年度はまず胎生期から出生後における一般的なマウス表現型解析を実施した。その結果、あるミュータントでは重度の致死性を伴う胎仔期成長不良を、別のミュータントでは胎仔期中期からの成長不良を示した。また胎仔期に異常はみられないものの、出生後離乳期までに重度の成長不良を示すミュータントも確認できており、これら複数のPeg10ミュータントマウスの表現型解析により、Peg10KOマウスの解析だけでは分からなかった未知のPeg10機能の一端が分かり始めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの各種Peg10ミュータントマウスの表現型解析から、Peg10欠損により重度の致死性や極端な成長不良が起きることが明らかとなり、翌年度以降のPEG10機能探索の準備が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、各種Peg10ミュータントマウスのPEG10欠損組織に起きている異常の詳細を形態観察及び遺伝子発現解析等により実施する予定である。また有袋類PEG10Tgマウスによるレスキュー実験についても開始の準備が整っているため交配実験を開始する。これまでで最も進捗が早いミュータントマウスの解析結果については論文投稿準備を進めていく。
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Causes of Carryover |
研究計画のうち、ミュータントマウス表現型の初期スクリーニングに時間を割いたため、詳細な解析に必要な消耗品等の使用・発注が抑えられたため次年度使用額が生じている。次年度はPEG10発現組織の免疫染色やトランスクリプトーム解析の実施にそれらを使用する計画である。
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[Presentation] 真獣類特異的レトロウィルス由来遺伝子Sirh 4, 5, 6 の機能解析2023
Author(s)
藤岡 慶史, 志浦 寛相, 石井 雅之, 小野 竜一, 遠藤 墾, 平手 良和, 伊藤 日加瑠, 金井 正美, 石野金児 知子, 石野 史敏
Organizer
第46回日本分子生物学会年会