2023 Fiscal Year Research-status Report
The role of DNA methylation in epigenetic barrier between naive and primed state
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23K05607
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
浦 大樹 金沢医科大学, 総合医学研究所, 講師 (90624958)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | エピジェネティクス / 細胞分化 / 幹細胞 / DNAメチル化 / エピジェネティックバリアー / 発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
全能性を持つ受精卵は、発生過程において分化能が制限され、それぞれの細胞が特定の細胞に分化することで個体を形成する。しかしながら持っている遺伝情報は変わることはないことから、後天的な制御であるエピジェネティックな制御(エピジェネティックバリアー)により、特定の遺伝子群の発現を制御することによって分化能を制限し、正常に発生しているといったエピジェネティックランドスケープが提唱されているが、実体は明らかとなっていない。マウス多能性幹細胞には、着床前胚から樹立されたESCと着床後から樹立されたより分化の進んだEpiSCが知られている。樹立された発生時期の違いから、ESCは胎盤の元となる胚体外内胚葉(XEN)に分化できるのに対し、EpiSCはXENには分化できないことが知られている。エピジェネティックバリアーにより分化運命が決定されており、EpiSCではXENへの分化を制御する遺伝子群が抑制されていると考えられる。抑制性エピジェネティック修飾の1つであるDNAメチル化が着床後、さらにはESCに比べEpiSCで劇的に増加しているため、DNAメチル化がXENへの分化を抑制するエピジェネティックバリアーと仮定した。そこで3つのDNAメチル化酵素(Dnmt)遺伝子を破壊し、DNAメチル化能が完全に欠損したDnmtトリプルノックアウト(TKO) ESCからEpiSCを樹立し、XEN分化誘導システムにより、DNAメチル化が入っていないTKO EpiSCがXENに分化可能かを検討することで、エピジェネティックバリアーの実体がDNAメチル化であるか否かを明らかとすることを目的としている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エピジェネティックバリアーの実体がDNAメチル化であるか否かを明らかとするため、DNAメチル化が完全に欠損したDnmt1/3a/3b (TKO) ESCからEpiSCの樹立を行った。樹立できていることを確認するため、マイクロアレイを用いた網羅的発現解析やクロマチン免疫沈降法(ChIP-Seq)による多能性転写因子であるOct3/4の結合部位の解析により、TKO EpiSCは野生型EpiSCと同様にEpiSCの発現パターンに近く、またOct3/4の結合部位もESCではなくEpiSCに類似していることが明らかとなった。これらの結果により、TKO EpiSCが樹立されていることが示されたのでおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
野生型のEpiSCはESCと異なり胚体外内胚葉(XEN)への分化はエピジェネティックバリアーにより抑制されていること示唆されている。そこで本研究で仮定したエピジェネティックバリアーであるDNAメチル化を完全に欠損したTKO EpiSCをXENへ分化させることでXENへの分化能を検証する。Dnmt1/3a/3b (TKO) EpiSCに分化誘導転写因子であるGata6とグルココルチコイド受容体との融合タンパク質を発現するベクターを導入し、安定的にXENへの分化を誘導できるXEN分化誘導システムを持ったTKO EpiSCを作成し、XENへの分化能を検証する。
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Causes of Carryover |
分化能を調べるために細胞培養試薬、次世代シークエンサー試薬や分子生物学実験試薬が必要となるため。
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