2023 Fiscal Year Research-status Report
がんシグナルに関わる1回膜貫通糖タンパク質CDCP1の分子メカニズムの解明
Project/Area Number |
23K05655
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松田 真 大阪大学, 蛋白質研究所, 特任助教(常勤) (60626183)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 結晶構造解析 / 糖タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
DCP1はがん細胞で発現量が増え、集積することが知られている。CDCP1の細胞外領域はセリンプロテアーゼMT-SP1により切断を受け活性化し、様々な受容体と相互作用し、シグナル伝達を行う。CDCP1のシグナル制御が破綻すると、がん細胞の浸潤や転移につながる。CDCP1の細胞外領域のX線結晶構造解析により、CDCP1の活性化機構についての理解を目指すため、以下の研究を行った。 1. 非切断型CDCP1の細胞外領域のX線結晶構造解析:分解能2.8オングストロームの回折データの収集を行うことができ、そのデータの解析を行い、位相決定を行い、電子密度図を得ることが出来た。得られた電子密度図を用いて、モデル構築を行った。 2.切断型CDCP1の細胞外領域の結晶化:セリンプロテアーゼMT-SP1による切断を行ったCDCP1のバッファーのpHや塩濃度の検討を行い、精製を行った。得られた精製サンプルは動的光散乱DLSにより、分子径の分散度を確認し、結晶化に適していると判断した。この精製サンプルを用いて結晶化スクリーニングを行い、結晶を得ることに成功した。得られた結晶はSPrign-8 BL44XUにて回折実験を行い、分解能3.9オングストロームのデータの収集に至った。 3.CDCP1と相互作用する受容体の発現系の構築:CDCP1と相互作用すると報告されている種々の受容体を昆虫細胞―バキュロウイルスの系を用いてタンパク質の発現を確認した。発現が確認できた受容体について、バッファーのpHなどの精製条件の検討を行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CDCP1の非切断型の構造解析がアミノ酸の側鎖までおおよそ判別できる電子密度図を得ることが出来ており、構造解析の目処がついている。また、切断型CDCP1の結晶を得ることが出来ている。CDCP1と相互作用する受容体の発現系は構築が完了している。 本研究のメインであるCDCP1の構造解析が予定通り進んでいるためにおおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
シグナル伝達のハブとなるCDCP1の活性化機構についての理解を目指すため以下の方策で進める。 非切断型CDCP1の構造解析はモデル構築を更に進めていき、最終構造の決定を行う。切断型CDCP1については、分解能の向上を目指し、結晶化条件および結晶凍結の条件検討を行う。条件検討と並行して、得られている回折データの解析を行い、低分解能ではあるが、構造決定できるかを検討する。CDCP1と相互作用する各受容体は精製条件の検討を行い、精製が完了したものを用いて、CDCP1と相互作用するのかをゲルろ過で評価する。
|
Causes of Carryover |
CDCP1の非切断型の結晶構造解析に多くの時間を使ったため、当初の計画に対して差額が生じた。次年度には、現在得られている切断型CDCP1の結晶の分解能向上のため、結晶化の実験を多く行うことになるので、その消耗品購入に充てる予定にしている。
|