2023 Fiscal Year Research-status Report
Mechanism elucidation of silicic acid transport by a crop silicic acid efflux transporter.
Project/Area Number |
23K05656
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
齊藤 恭紀 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 助教 (10808786)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 穀物 / 膜タンパク質 / ケイ酸 / 輸送体 / 構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
ケイ素は土壌中に豊富に含まれる植物の有益元素であり、ケイ素を良く吸収するイネ科植物においてその有益性は顕著である。イネ等の穀物はケイ素を土壌中から取り込み、生物的・非生物的ストレスに対して耐性を獲得しているので、ケイ素を取り込む仕組みの理解は穀物の頑健性や生産性の向上に大きく寄与すると期待されている。穀物におけるケイ素の取り込みは、根の外皮細胞及び内皮細胞の細胞膜上に発現しているケイ酸チャネルとケイ酸排出輸送体が協同して土壌中のケイ酸を取り込むことから始まる。これらの膜タンパク質はケイ素の他にヒ素も亜ヒ酸の形で輸送するので、食料の安全性の観点から輸送基質の選択性を改変することが期待されている。そのためには、これらの膜タンパク質の構造を詳細に知る必要がある。これまでに研究代表者はイネのケイ酸チャネルの構造を1.8 Å分解能で解明し、詳細なケイ酸透過機構の一端を明らかにしてきた。しかしながら、ケイ酸排出輸送体の構造は未知であり、その輸送機構の詳細は全く分かっていない。本研究課題の目的は、穀物由来のケイ酸排出輸送体の構造解析を成し遂げ、ケイ酸チャネルの構造の知見と合わせて穀物のケイ酸・亜ヒ酸の輸送機構を原子レベルで理解できるようにすることである。 本年度では、4種類の穀物由来のケイ酸排出輸送体のホモログを精製し、それらの輸送体の生化学的特性を明らかにした。その結果、ケイ酸排出輸送体はホモログによって二量体や三量体で安定していることが分かった。それらを脂質膜中に再構成した状態で精製する条件を検討した。精製したケイ酸排出輸送体をクライオ電子顕微鏡で観察して単粒子像を得た。観察に適したグリッド条件の検討も行ったが、明瞭な平均像を得られなかった。その原因としてケイ酸排出輸送体のサイズが小さく、特徴的な細胞外領域を持たないことが原因ではないかと考え、構造認識抗体の作製を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では、初年度にケイ酸排出輸送体の構造認識抗体の取得、結晶化、クライオ電子顕微鏡を用いた単粒子構造解析のグリッド条件の探索を計画していた。 本年度では、ケイ酸排出輸送体の構造認識抗体を作製するため、ケイ酸排出輸送体を大量に精製してマウスに免疫したが、良質な構造認識抗体は得られなかった。そのため、マウスの免疫系を用いて構造認識抗体を作製することとは別に、試験管内で抗体を作製する方法を新たに取り入れ、抗体作製を進めている。ケイ酸排出輸送体の結晶化コンストラクトの改良を行い、結晶パッキングを改善させようと試みたが、まだ結晶パッキングは改善しておらず、さらなる試行錯誤が必要である。クライオ電子顕微鏡観察に用いるグリッド条件の探索は行い、観察に適した条件を把握することが出来た。 以上の結果を鑑みて、現在の進捗状況はやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに、数種類の穀物のケイ酸排出輸送体の精製に成功し、その生化学的特性を明らかにして構造解析に適したホモログを選別することが出来ている。しかしながら、ケイ酸排出輸送体が小さく、膜外領域が少ないために構造解析を困難にしている。それを克服するため、マウスを用いて構造認識抗体の作製を進めてきたが、有望な構造認識抗体が得られないでいる。今後は、試験管内で抗体を作製する新たな技術を使ってケイ酸排出輸送体の構造解析を目指す。
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Causes of Carryover |
マウスを用いた構造認識抗体の作製が想定していたよりもうまくいかず、それに伴う研究計画のズレによって次年度使用額が生じた。本年度は試験管内で抗体作製する新たな方法を取り入れているので、積極的に研究費を使用していきたいと思っている。
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