2023 Fiscal Year Research-status Report
Molecular drawing of phase separation control breakdown using specific isotope modification
Project/Area Number |
23K05657
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
服部 良一 徳島大学, 先端酵素学研究所, 学術研究員 (60778140)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | タンパク質科学 / NMR / 相分離 / 分子シャペロン |
Outline of Annual Research Achievements |
相分離シャペロンを対象とした構造生物学研究によって、相分離シャペロンによる相分離制御とALS発症の引き金となる制御破綻の分子メカニズムを明らかにする目的で、以下を実施した。 「相分離制御メカニズムの解明」という観点においては、ALS関連変異が存在し相分離することが知られるhnRNPA2とその制御を担うPPIAについて、それぞれ安定同位体標識タンパク質を調製し、NMRによる相互作用解析を実施した。その結果、PPIAにおいてはN102など酵素活性ポケット周辺が、hnRNPA2においてはP303などが相互作用部位として同定された。今後、両者の複合体構造決定により詳細な認識機構を明らかにする。またPPIAの基質となるプロリン残基のシス-トランス異性化状態を解析することにより、相分離制御の分子機構を解明する。 「相分離制御破綻のメカニズム解明」という観点では、PPIAにおけるALS関連変異体K76Eについて安定同位体標識タンパク質を調製し、NMR解析を実施した。その結果、変異による立体構造変化は変異箇所周辺のみで局所的にみられており、酵素活性ポケット周辺への影響は小さいことが示された。しかしK76E変異体について、生化学的手法により酵素活性を評価すると、野生型よりも少ないながら活性が低下することが示された。今後この要因を明らかにするため、PPIAの酵素活性の発現にタンパク質のダイナミクスが重要な役割を果たしているという報告を踏まえ、変異によるダイナミクスの変化を解析する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、PPIase活性を持つ相分離シャペロンに注目し、分子の視点から相分離制御と制御破綻のメカニズムを明らかにすることを目的としている。また同位体修飾技術の高度化によって、これまで困難であった相分離過程のNMR検出を可能にする。 研究実績の概要に示したとおり、相分離制御と制御破綻のメカニズムについては、相分離シャペロンと相分離性タンパク質としてそれぞれ、PPIAおよびhNRNPA2のNMR解析に着手し、順調に成果を上げている。同位体修飾技術の高度化については現在実験系の構築を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに「相分離制御メカニズムの解明」という観点では、分子シャペロンであるPPIAと相分離性タンパク質であるhnRNPA2の相互作用部位をNMR解析から明らかにした。今後は、PPIAとその基質となるプロリン残基を含むhnRNPA2断片の複合体を安定的に形成させ、複合体の立体構造決定を行う。またhnRNPA2断片に含まれるプロリン残基のシス-トランス状態をNMR解析によって定量化し、PPIAの存在がシス-トランス異性化にどのような影響を与えるかを解析する。 「相分離制御破綻のメカニズム解明」という観点では、PPIAにおけるALS関連変異K76Eによる立体構造変化を解析した。今後は立体構造変化のみならずタンパク質のダイナミクスに与える影響をNMR解析によって定量化し、酵素活性の変化と関連づけて議論する。 「同位体修飾技術の高度化」については、hnRNPA2に含まれるリジン残基をメチル化する手法を適用し、選択的にNMR検出する。そしてこのメチル基をプローブとして相分離液滴の形成過程を高感度にモニターする。
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Causes of Carryover |
本年度の研究に必要なタンパク質試薬が予定より少額で賄えたため、次年度使用額が生じた。次年度は、データ解析のためコンピューター関連の物品が多く必要になると予想されるため、次年度研究費(物品費)と合わせて使用する計画である。
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Research Products
(1 results)