2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23K05662
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
大澤 拓生 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 研究員 (00771164)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ゲノム複製 / デングウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
デングウイルス環状化ゲノムを模倣した小さなRNAを用いて、RNA合成開始複合体のクライオ電子顕微鏡による構造解析を行い、NS5-SLA複合体(PC)とNS5-NS3-SLA複合体(PC-NS3)の構造を得ることに成功した。V字型をしたSLAが、NS5のMTドメインとThumbサブドメインをブリッジしている一方で、NS3はNS5のRdRpドメイン側面に位置していた。SLAのキャップ構造を含む領域をMTドメインが認識し、Top stem-loopの部分をThumbサブドメインに形成された塩基性ポケット(Thumbポケット)が認識していた。ThumbポケットはSLAのリン酸骨格を主に認識しており、Thumbポケットを構成する塩基性アミノ酸をアラニンに置換すると、NS5のSLAに対する親和性が低下した。この結果は、ThumbポケットがNS5-SLA間相互作用において重要な役割を果たしていることを示している。SLAとNS5の結合形式は、環状化ゲノムの3’末端をNS5のRdRp活性部位の近くに配置し効率的にRNA合成を開始するのに適している。 RNA合成開始複合体に加えて、RNA伸長複合体(EC)の立体構造の決定にも成功した。NS3はMTドメインとThumbサブドメインと相互作用しており、PC-NS3のNS3とは異なる位置を占めていた。ECではNS3の一本鎖RNA結合部位とNS5のRdRp活性部位の間に正電荷を帯びた領域が広がっており、この領域がNS3からNS5への鋳型RNAのスムーズな受け渡しを可能にしているのではないかと考えられる。 以上の結果は,デングウイルスゲノム複製の仕組みへの理解を大きく前進させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RNA合成複合体の重要な状態の構造を複数明らかにし、デングウイルスゲノム複製の仕組みへの理解を大きく前進させることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
SLA以外のRNA因子に結合したNS5-NS3複合体の構造解析、他の非構造タンパク質と結合したNS5-NS3複合体の構造解析を進める。それにあたって、試料調製、グリッド作製の条件検討を行っていく。
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Causes of Carryover |
当初の予定より研究が順調に進行し、実験的な試行錯誤のための費用が節約できたため次年度使用額が生じた。繰り越し分は翌年度分と合わせて、構造決定のための試料調製費用として使用していく。
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