2023 Fiscal Year Research-status Report
止血因子を貯留する分泌顆粒WPBの分解機構の解明:出荷審査は行われているのか?
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23K05676
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
芝 陽子 岩手大学, 理工学部, 准教授 (50755866)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | vWF / WPB / 分泌顆粒 / ArfGAP / 分解 / Arf / 血管内皮細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
止血因子von Willebrand Factor(vWF)は血管内皮細胞で合成され2μm以上もある長い葉巻型の分泌顆粒Weibel Palade Body(WPBs)に蓄積される。葉巻型WPBは短い未成熟な顆粒型WPBが成熟して葉巻型になると考えられている。葉巻型WPBから分泌されるvWFは血小板結合能が高く、止血能が高い。そのため葉巻型WPBの成熟過程の解明は重要である。申請者はこれまでArfGAPファミリーが細胞内輸送において選別に関与すると報告しており、研究過程でArfGAPファミリーの一つSMAP1を血管内皮細胞で欠損させると、WPBが未成熟な下流型WPBになることを見出した。これまでの研究で、SMAP1の欠損細胞では、分泌されたvWFの多量体化やvWFの分泌量には変化がなかった。一方、リソソームの酵素を阻害するLeupeptinで処理したところ、下流型WPBのサイズが一部長くなり、表現型を回復したことから、本研究ではSMAP1が葉巻型WPBの分解を促進し、未成熟な顆粒型WPBが増加したのではないかという仮説を検証する。これまでに葉巻型WPBが細胞内で分解がされていないかどうか、オートファジーを促進するEtoposideやオートファジーを阻害する3-MAで処理して葉巻型WPBの分解が促進されていないか調べた。またオートファジーマーカーのLC3、オルタナティブオートファジーのRab9、またクリノファジーが起こっていないか調べるため、リソソームマーカーLamp1とWPBの共局在も調べた。SMAP1欠損であまり変化が見られたなかったため、SMAP1が分解ではなく、成熟に関与するのかもう一度検証するため、ゴルジ体の形態やWPBのpHに変化がないか調べている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3-MA処理では、Leupeptin処理と同様、SMAP1欠損細胞の2μm以上のWPBの割合の回復が見られた。しかしながら、0.5μm-1μmの顆粒型WPBの割合も増加しており、リソソームではむしろ顆粒型WPBが分解されている可能性が示唆された。マクロオートファジーマーカー、LC3とvWFとの共局在を調べたが、野生型でも共局在率は低く、SMAP1欠損細胞で共局在の増加は見られなかった。LC3に非依存性のオルタナティブオートファジー経路で分泌顆粒が分解される可能性を調べるため、マクロオートファジーとともにオルタナティブオートファジーも促進するEtoposideで処理したが、葉巻型WPBの割合に特に変化は見られなかった。WPBがクリノファジーなど、本当にリソソームへの分解経路で分解されているのか調べるため、リソソームマーカー、Lamp1とvWFの共局在を調べたところ、顆粒型WPBでごく一部共局在が見られ、SMAP1欠損細胞で特に変化はなかった。Lamp1が共局在するWPBの長さを定量したところ、1μm以下の顆粒型WPBで共局在が見られ、WPBは分解される可能性はあるものの、未成熟型WPBが分解されている可能性が示唆された。そこで、SMAP1がゴルジ体からの出芽に関与していないか、もう一度詳細に調べるため、SMAP1欠損細胞でゴルジ体の形状や、ゴルジ体を通って恒常的に分泌されるアルカリフォスターゼの分泌を調べたが、ゴルジ体に特に変化は見られなかった。このため、現在はSMAP1欠損細胞で顆粒型WPBの成熟が阻害されていないか、GFP-vWFを用いてpHを調べている。
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Strategy for Future Research Activity |
まだ確認は取れていないが、SMAP1の欠損細胞で、本来低下するはずのWPBのpHが上がっているデータを得ている。今後は実験回数を増やし、結果の確認を取る。これまでの結果から、SMAP1はWPBの分解ではなく、WPBの成熟に関与している可能性が示唆された。これまでにSMAP1欠損ではゴルジ体には影響がなく、また電気泳動法による多量体化やELISAによる分泌量の測定でも影響が見られていない。SMAP1はその遺伝子に変異が入ると、遺伝的に静脈血栓症になる可能性が高いという報告もあり、SMAP1欠損では分解や分泌の阻害よりむしろvWFが多めに分泌されている可能性がある。今後はSMAP1欠損でpHが十分に下がらず、WPBの成熟が阻害されている可能性を検証する。 また、SMAP1と同様にArfGAPファミリーの一つAGFG2がvWFの分泌に関与するとして発見しているが、AGFG2は機能や分子機構がほとんど未解明であるため、AGFG2の機能解析も進める。
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