2023 Fiscal Year Research-status Report
変異アクチンの新規調製法の確立と疾病メカニズム解明に向けたアプローチ
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23K05688
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
梅木 伸久 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 研究員 (70647502)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 細胞骨格 / 優性変異 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は昆虫細胞発現系によるアクチンの調製法の構築に努めた。野生型アクチンまたは優性変異アクチンを、アクチン結合タンパク質であるチモシンとの融合タンパク質の形で精製することにそれぞれ成功した。またアクチンのD-ループに結合するタンパク質であるトロポモジュリンを、大腸菌の系で調製した。次に、融合タンパク質のアクチン部分を、チモシンから分離するためにキモトリプシンで処理した。その際、トロポモジュリン存在下では、キモトリプシンによるアクチンのD-loopの切断が抑えられるものと期待された。しかしながら、トロポモジュリン存在下においてD-loopの切断は抑えられなかった。それどころか、むしろその存在下においてD-loopの切断が促進されていた。このことは、キモトリプシンを用いて、アクチン-チモシン融合タンパク質からアクチン部分を遊離させる際に意図せず起こるD-loopの切断現象を、トロポモジュリンでは抑制することができないことを示唆していた。次年度は、他のD-loop結合蛋白質を試す予定である。同時に、野口らの従来法(Noguchi et al., 2007 J.Biol.Chem)で目的の変異アクチンが調製できるかどうか検討を行う。 優性変異アクチンの生理的特徴を理解するために、アクチンのN末にGFPを融合したGFP-アクチンをHeLa細胞内に一過的に過剰発現させた。その結果、野生型のGFP-アクチンはフィラメントを形成する様子が観察されたが、優性変異アクチンではほとんど見られなかった。この結果は、優性変異アクチンの重合能が低下していることを示していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞内の優性変異アクチンの重合能の低下を示唆する結果が得られた。ただし、トロポモジュリンを用いた精製方法が機能しそうにないので、それについては改善を要する。
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Strategy for Future Research Activity |
当初想定していたトロポモジュリンの精製系が上手く行きそうにないので、他の精製方法に切り替えることも検討する。前年度の余剰資金を活用し、他のアクチン結合タンパク質遺伝子の購入に充当する。
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Causes of Carryover |
他の研究予算で購入した機材を活用したため、購入を見送った物品があった。そのために余剰金が発生した。これらの余剰資金は、解析自動化のためのソフトウエアを購入して、研究を加速させることに使用する。また、SDS電気泳動における蛍光バンドの検出のための装置(LEDトランスイルミネーター)を購入し、アクチンの新規精製法を評価する。
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