2023 Fiscal Year Research-status Report
GPI生合成と脂質合成に関わるARV1の機能の解明
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23K05695
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
村上 良子 大阪大学, 微生物病研究所, 特任教授 (00304048)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ホスファチジルイノシトール(PI) / PIGQ / NアセチルグルコサミンPI / グリコシルホスファチジルイノシトール / ARV1 |
Outline of Annual Research Achievements |
GPIの生合成はPI(ホスファチジルイノシトール)に単糖であるGlcNAc(Nアセチルグルコサミン)を付加する第一ステップから始まりこの反応は7個のタンパク質からなるGPI-GNT複合体によって担われている。 ARV1がこのGPI-GNT複合体の1因子として、どの因子と結合しているかを確認する目的で、様々な組み合わせで結合実験を行ったところ、ARV1は複合体の1因子であるPIGQとのみ直接結合していることがわかり、コンピューターによる予測と、その検証により結合部位を同定した。 次にARV1のGPI-GNT複合体における役割を確認する目的で、ARV1ノックアウト細胞を作製し、ラジオラベルの基質と反応させ第一ステップの産物の量を測定することにより、複合体の活性を正常細胞と比較したところ著しく低下しており、さらに詳細な解析でARV1はもう一つの基質であるPIの利用を促進していることがわかった。 つまりARV1は第一ステップでPIのリクルートを促進することにより、酵素反応を助けていることがわかった。 ARV1は先天性GPI欠損症(IGD)の原因遺伝子の一つとして最近報告された遺伝子で、その変異により知的障害、難治性てんかんなど他のIGDと類似の症状をきたし線維芽細胞でGPIアンカー型タンパク質(GPI-AP)の発現低下が認められる。今回の成果でヒトの細胞で、ARV1がGPI生合成の最初のステップに関わってその酵素活性を高めていることが証明され、ARV1欠損症ではその機能が障害されることによってIGDを発症していることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ARV1が複合体の1因子であり、PIGQと直接結合すること、さらにはその結合部位を同定した。ARV1が複合体の酵素活性を促進することが証明できた。
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Strategy for Future Research Activity |
ARV1がGPI生合成の最初のステップに関与して、その活性を高めることはわかったが、その機序についてはあきらかでないのでそれを解明する。それに加えてGPIにはアルキルアシル型のPIが好んで使われることがわかっているが、脂肪酸組成が異なるPIに対するGPI -GNT 複合体の基質選択性へのARV1の関与について解析するとともに、その生理的な意義について解明する。既報によりARV1がGPI合成のみならず、脂質合成や代謝に関与していることが示唆されているので、その再現性とメカニズムについて解析する。
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