2023 Fiscal Year Research-status Report
中性グルコシルセラミド分解酵素を介した神経変性疾患発症機構の解明
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23K05699
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
秋山 央子 順天堂大学, 健康総合科学先端研究機構, 特任助教 (80623462)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | グルコシルセラミド分解酵素 / GBA2 / 神経変性疾患 / エクソソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、中性グルコシルセラミド分解酵素(GBA2)の遺伝子欠損マウスの胎児より線維芽細胞 (Gba2 KO-MEF)を樹立し、Gba2 KO-MEF ではGBA1とGBA2の両酵素活性が低下し、エクソソームと呼ばれる膜小胞の産生を正に制御する中性スフィンゴミエリン分解酵素2(nSMase2)の発現量が増加し、細胞外に放出されるエクソソームが増加することを見出した。エクソソームを介して神経変性疾患の原因物質の伝播が行われるが、GBA1とGBA2の関与については未だ明らかになっていない。 2023年度は、Gba2 KO-MEFで確認された表現型が、GBA1とGBA2のどちらの酵素活性の低下によるものかを明らかにするため、Gba2 KO-MEFへのマウス野生型Gba1または野生型Gba2の導入によって表現型がレスキューされるか否かを確認した。マウス野生型Gba2を導入したGba2 KO-MEFでは、nSMase2の発現量が低下し、細胞外に放出されるエクソソームの量が減少した。一方、マウス野生型Gba1遺伝子を導入した細胞では、nSMase2の発現量に変化がなかったことから、GBA2がエクソソームの産生に関与することが判明した。 GBA2の遺伝子変異は、運動神経の変性により発症する遺伝性痙性対麻痺や常染色体劣性小脳失調、マリネスコ・シェーグレン症候群の患者で18種類見つかっている。これらの変異のうち、GBA2の酵素活性が減少する13種類を選択し、それぞれGba2 KO-MEFに導入した結果、13種類中6種類でGBA2のタンパク質の発現が確認できた。6種類全てにおいて、変異型Gba2導入前のGba2 KO-MEFと比較してnSMase2の発現量に有意な変化はなかった。この結果より、GBA2の酵素活性依存的にnSMase2の発現量が調節されることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Gba2 KO-MEF で確認された表現型のうち、一部についてのみGBA2の酵素活性の低下によるものであるかの検証が完了したため、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
Gba2 KO-MEF で確認された表現型について、GBA2の酵素活性の低下によるものであるかの検証を継続する。GBA2とnSMase2が直接関係しているという報告はこれまでにないが、両者はどちらも小胞体に局在する。小胞体での両者の動態に着目し、GBA2とnSMase2がどのように相互作用してエクソソームの産生を調節するかを解析する。
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Causes of Carryover |
当初計画より実験の進展に遅れが生じたため、交付申請時に計上した予算を全て使用しなかった。未使用分は、交付申請書に記載した研究実施計画に従って次年度に使用する。
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