2023 Fiscal Year Research-status Report
テトラエーテル骨格を特長とする擬環状脂質を利用した人工細胞膜の創製
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23K05709
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
園山 正史 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (40242242)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | リン脂質 / 脂質膜 / エーテル型リン脂質 / 古細菌脂質 / 古細菌 / 膜タンパク質 / 環状脂質 / 微生物ロドプシン |
Outline of Annual Research Achievements |
既に予備的に進めていた疎水鎖長C14のテトラエーテル型擬環状リン脂質の追加合成をさらにグラムスケールで行うとともに、鎖長を伸長した疎水鎖長C16のテトラエーテル型擬環状リン脂質の合成をグラムスケールで行った。得られた化合物は、ODSカラムを用いたHPLCではシングルピークを示したことから、十分に純度の高い化合物を得ることができた。また、後述する示差走査熱量測定(DSC)からも、非常に純度の高い脂質試料が得られたと考えられる。 さらに、超純水を用いてテトラエーテル型リン脂質を懸濁した試料のDSC測定を行い、脂質膜の熱物性を調べた。その結果、鎖長伸長に伴う吸熱ピークの温度上昇が顕著に見られた。またジエーテル型リン脂質二分子膜との比較から、擬環状化の影響も際立っており、今後、X線回折測定結果を含めて、転移に伴う構造変化と熱力学量の詳細を考察する予定である。 また、一定レベルで確立していた、来年度以降にテトラエーテル型リン脂質膜に再構成する膜タンパク質の発現・精製についてもさらなる検討を行った。それに加えて、最終的な目標であるナノディスクへの再構成についても条件検討を行った。その結果、いくつかの微生物ロドプシンについて、脂質膜への再構成実験に必要な十分な量かつ純度の高い可溶化膜タンパク質試料を得ることに目処が立ち、来年度以降の再構成実験に向けて一定レベルの準備が整った。ナノディスクへの再構成については、用いる膜タンパク質にそれぞれ対応した実験条件の検討がさらに必要な状況である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
擬環状テトラエーテル型リン脂質の合成は、特に大きな問題も無く順調に進んでいる。C14に加えて、C16の擬環状脂質のDSC測定は順調に進んでおり、再現性も十分に確認できており、鎖長依存的な性質を明らかにすることが可能になりつつある。また、天然由来および大腸菌発現系を利用した複数の微生物ロドプシンの大量調製が可能な状況になっており、膜タンパク質の再構成実験が進みつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
擬環状テトラエーテル型リン脂質の合成は順調に進んでおり、脂質膜の構造・物性の解析をさらに進めて行くとともに、膜タンパク質機能場としての特徴の解析に力を入れていく。脂質膜の解析については、放射光X線回折実験も利用して、対応するジエーテル型リン脂質二分子膜との比較に基づき、擬環状テトラエーテル型リン脂質膜の熱物性および構造の特徴を明らかにする。また、膜タンパク質を再構成した試料を調製し,再構成膜を構成する擬環状脂質と膜タンパク質の構造・活性・物性との関連性を調べる。
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Causes of Carryover |
テトラエーテル型リン脂質の合成が予定より順調に進み、高純度な試料を高収率で得ることができた。また、微生物ロドプシンの発現・精製についても条件検討が順調に進み、再構成に必要な試料を高収率で得られた。そのため、研究遂行に必要な試薬や実験器具類の購入が、当初の予定より少なく済んだ。 次年度に繰り越した研究費は、さらに大スケールでの試料調製に使用する予定である。
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