2023 Fiscal Year Research-status Report
Development of a monophasic sleep model in mice
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23K05738
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大出 晃士 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 講師 (40612122)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 睡眠 / マウス / 単相性 / 多相性 |
Outline of Annual Research Achievements |
マウスは、一日に睡眠と覚醒を何回も繰り返す多相性睡眠を示す。マウスは睡眠研究において重要なモデル生物である一方、多相性睡眠であるがゆえに、睡眠エピソードを挟まずに覚醒時にのみ特定の刺激を与えたり、覚醒時の応答を数時間継続して観測することが容易ではなかった。本年度は、ウイルスベクターを用いた後天的な遺伝学的摂動を用いて、呼吸波形を元にした睡眠覚醒リズムの測定から、特に暗期(マウスにとっての活動期)に覚醒が継続し、単相性に近い睡眠覚醒リズムを示す実験系を構築した。特に、この系における睡眠覚醒リズムが、脳波筋電図測定を用いた睡眠測定でも確認された。すなわち、観測された覚醒の継続が、呼吸測定によるアーティファクトでないことを確認し、さらに、脳波レベルでも生理的な睡眠覚醒と判断される表現型(例えば、睡眠圧の指標と考えられているNREMデルタパワーの増減が睡眠覚醒リズムに従って観察される)であることを確認した。また、このマウスの単相性に近い睡眠覚醒リズムは、恒常的暗条件でも保存されていたことから、明暗光環境への過剰応答によるものではないことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ウイルスベクターを用いた後天的な遺伝学的摂動による単層性睡眠マウスモデルが示す睡眠覚醒リズムの表現型を、脳波レベルで確認した。このことで、観測されていた単相性様睡眠表現型が、測定系のアーティファクトではないことが支持され、本研究の最も重要な基盤実験系が構築できた。初年度として、概ね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
脳波レベルで単相性様の睡眠覚醒リズムが確認されたことをうけて、次年度は、まずNREM睡眠時の脳波デルタパワーを睡眠圧の指標として、リバウンド睡眠応答への影響を調査する。特に、本研究の大きな課題の一つである、覚醒中に与えられた刺激が睡眠圧に影響を及ぼすか否かを検証するために、明期や暗期の異なる時間帯に覚醒刺激を与えた際の、デルタパワー応答を定量する。この実験では、覚醒刺激を効率よく与えることがスムーズな実験の遂行に重要であるため、物理刺激を持ちた覚醒刺激実験も、できるだけ研究者の手を介さない半自動的かつ非/低侵襲的な刺激方法を検討する。
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Causes of Carryover |
本年度の研究計画では、脳波レベルでの睡眠覚醒リズムが生理的な睡眠と判断される範囲のウイルスベクター摂動条件を検討することが重要な計画であったところ、あまり条件検討の必要なく、単相性様睡眠表現型について呼吸を用いた測定と脳波を用いた測定の一致が確認された。そのため、ウイルスベクターの調整に必要と想定していた消耗品について、一部未使用額が発生した。次年度は、脳波測定を主として展開するなかで、当初計画としては明示していなかった覚醒刺激を与える方法の半自動化にも取り組みたいと考えており、未使用額をこの手法開発に充てる。
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