2023 Fiscal Year Research-status Report
新規のパーキンソン病モデル酵母を用いた病因遺伝子の機能解析と創薬への応用
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23K05760
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Research Institution | Toyama Prefectural Institute for Pharmaceutical Research |
Principal Investigator |
小島 理恵子 富山県薬事総合研究開発センター, その他部局等, 主任研究員 (60769652)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | パーキンソン病 / CHCHD2 / Mix17 / ミトコンドリア / mtDNA |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,パーキンソン病 (PD) の原因遺伝子CHCHD2の出芽酵母オルソログMix17の主要機能を明らかにし,Mix17をターゲットとした創薬スクリーニングの基盤を確立することを目的としている。これまでに,新規のPDモデル出芽酵母(CHCHD2のPD疾患関連変異を酵母ゲノムのMix17遺伝子に導入したもの,以下MIX17 PD変異体とする)を用いて,Mix17がミトコンドリア形態やミトコンドリアDNA (mtDNA)の維持,呼吸活性,ミトコンドリアリン脂質合成に関与していることを明らかにしてきた。 当該年度は,MIX17 PD変異体におけるmtDNA欠失とミトコンドリアリン脂質異常との関連を調べた。MIX17 PD変異体ではmtDNAが欠失し,ミトコンドリア内で合成されるリン脂質カルジオリピン(CL)とホスファチジルエタノールアミン(PE)の量が減少する。mtDNAを欠失したrho0細胞におけるリン脂質組成を調べたところ,MIX17 PD変異体と同程度のCL, PEの減少が認められた。また,Mix17 PD変異体をプラスミドにより一時的に発現させた細胞(mtDNAを保持している)では,CL, PE量は野生型と同程度であった。さらに,MIX17 PD変異体は発酵培地において増殖阻害を示すが,rho0(発酵培地において増殖阻害を示す)のバックグラウンドでMix17 PD変異体をプラスミドにより発現させた細胞では,rho0の増殖阻害を促進せず,同等の生育を示した。以上のことから,MIX17 PD変異体におけるCL, PEの減少はmtDNAを欠失したことによる二次的な影響であり,Mix17の主要機能はmtDNAの維持と関連している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」にも記載した下記①に加えて,②ー④について実施中または実施済みであるため。 ①MIX17 PD変異体におけるミトコンドリアリン脂質(CL, PE)の減少はmtDNAを欠失したことによる二次的な影響であることを明らかにした。このことより,Mix17の主要機能がmtDNAの維持である可能性が示唆された。②野生型とMIX17 PD変異体のプロテオーム相対定量解析を行ったところ,MIX17 PD変異体ではミトコンドリア呼吸に関連するタンパク質の発現が有意に減少しており,MIX17 PD変異体の呼吸培地における細胞増殖阻害や呼吸活性低下を支持する結果であった。③FLAGタグを導入したMix17を酵母細胞から精製し,免疫沈降-質量分析法 (IP-MS) を用いてMix17の結合タンパク質候補を複数同定した。④これまでの研究成果を第96回日本生化学会大会で発表した(1P-267)。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度の研究結果から,Mix17の主要機能がmtDNAの維持と関連している可能性が示唆された一方で,未だ分子基盤は明らかとなっていない。そこで,MIX17 PD変異体のプロテオーム解析や遺伝学的解析を行い,Mix17とmtDNA維持に関わるタンパク質や遺伝子との関連について調べる。また,MIX17 PD変異体の発現とmtDNA欠失との関連をより明確にするため,ガラクトース誘導性プロモーターの制御下でMIX17 PD変異体を発現する系を構築し,変異体の発現量とmtDNA欠失の経時的変化について,それぞれウエスタンブロット,蛍光顕微鏡により調べる。また,IP-MSにより同定したMix17結合タンパク質候補について,Mix17との結合の詳細を調べる。これまでの結果よりMix17がオリゴマーを形成している可能性が高いことから,Mix17が含まれる複合体のサイズを密度勾配遠心法やBN-PAGEにより調べる。 Mix17の詳細な機能について明らかとなった場合には,最終年度に創薬スクリーニングの基盤を確立する。具体的にはMIX17 PD変異体の増殖阻害を回復させる化合物をスクリーニングする。Hitした化合物は増殖実験により再現性を確認し, Mix17機能との関連を調べる。
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Causes of Carryover |
【次年度使用額が生じた理由】①購入を検討していた試薬,消耗品の納期が年度内に間に合わず,次年度に購入することになったため。②実験計画当初の想定より安価な試薬や消耗品を購入できたため。 【使用計画】今年度の助成金は試薬、消耗品に充てるが,一部は学会参加や研究打ち合わせのための旅費にも使用を検討する。
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