2023 Fiscal Year Research-status Report
出芽酵母小胞体ストレス応答に機能する転写因子の抽出と解析
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23K05761
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
水野 智亮 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (80529032)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 小胞体ストレス応答 / 転写因子 / 遺伝子発現制御 / 出芽酵母 |
Outline of Annual Research Achievements |
小胞体ストレス応答は、細胞小器官である小胞体に未成熟タンパク質や異常タンパク質が蓄積した時に誘導される応答である。小胞体ストレス応答は、小胞体を保持する細胞、すなわち酵母からヒトに至る全ての真核生物の細胞に備わった重要な細胞保護機構である。また、小胞体ストレス応答の破綻は、がん・糖尿病・神経変性疾患を含む多様な疾病の発病・進行につながることが知られている。したがって、小胞体ストレス応答の分子メカニズムを解明することは、基礎生物学的にも医学・薬学的にも極めて重要である。申請者はこれまでに出芽酵母をモデル系として小胞体ストレス応答制御機構を解析してきた。その結果、転写因子を介した遺伝子発現制御が出芽酵母小胞体ストレス応答において重要な役割を担っていることを明らかにし、同時に小胞体ストレス応答において機能するが未だ同定されていない転写因子が多数存在すると予想した。そこで我々は、遺伝子変異による小胞体ストレス感受性の変化を指標として、小胞体ストレス応答に関与する転写因子の網羅的抽出をおこなった。出芽酵母全180種の転写因子のうち、減数分裂期で特異的に機能する9種を除く、171種について、遺伝子破壊株もしくは機能低下株を作製した。続いてそれらの小胞体ストレス感受性を検定し、小胞体ストレス感受性株を23種、小胞体ストレス耐性株を23種同定した。また我々は、GFP融合型タンパク質を用いて、小胞体ストレスによって細胞内局在が変化する転写因子を探索した。その結果、小胞体ストレス応答によって核局在が促進される因子を3種、阻害される因子を6種見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
解析対象と想定した転写因子全てについて、遺伝子破壊株もしくは機能低下株の作製を完了し、さらにそれらの小胞体ストレス感受性検定も完了し、これまでに小胞体ストレス応答への関与が報告されていない転写因子を複数見出すことができたことから。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝子破壊株もしくは機能低下株において小胞体ストレス感受性の変化が見られた転写因子について解析を進める。具体的には、遺伝子破壊株もしくは機能低下株において既知の小胞体ストレス応答経路の活性が変化しているか調べる。また、周辺で機能する因子が報告されている転写因子については、周辺で機能する因子の遺伝子破壊株もしくは機能低下株を作製し、小胞体ストレス応答における作用機序を解析する。
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Causes of Carryover |
(理由)遺伝子破壊株および機能低下株の作製が順調に進行し、プラスチック器具類・培地類・試薬類・酵素類を含む消耗品の消費量を抑えることができたため。 (使用計画)遺伝子発現解析の精度を高めるために、菌体培養・RNA抽出・cDNA作製・real time PCRに使用するキット類・酵素類の購入に充てる。
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