2023 Fiscal Year Research-status Report
まだら状の結合様式を示す微小管側面相互作用因子MTCL1による微小管修復機構の解析
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23K05769
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
伊藤 健太郎 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 助教 (60837128)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | MTCL1 / 微小管 |
Outline of Annual Research Achievements |
α/βチューブリンの微小管への取り込みは、これまで線維末端でのみ起こると考えられてきた。しかし、機械的なストレスや微小管切断酵素の作用が微小管線維の側面からのα/βチューブリンの脱落を引き起こし、そうしてできた虫食い状の損傷部位にGTP型チューブリンが取り込まれてGTPアイランドが形成されることが近年明らかとなってきた。更にこのGTPアイランドが、微小管が崩壊から再伸長に転じる際のレスキューポイントとして働き、微小管の安定化に重要な役割を果たしていると考えられるようになっている。しかし、いかにしてこの微小管損傷修復が進むのか、その分子機構はいまだほとんど不明である。本研究では、微小管上でGTPアイランドの分布に似た”まだら状”の結合様式を示すユニークな微小管側面結合タンパク質MTCL1の微小管相互作用機構の解明を切り口に、微小管損傷修復に関する独自のモデルを実証することを目的とする。 当該年度はMTCL1の2ヶ所の微小管結合部位(NMTBD、CMTBD)タンパク質をそれぞれ精製し微小管との相互作用を解析した。安定化活性があると予想されるCMTBDタンパク質と微小管との相互作用をTIRF顕微鏡で観察した結果、無傷の微小管への結合には大きな特徴は見られなかったが、微小管切断酵素Spastinを添加して微小管に損傷を与えると損傷部位にCMTBDタンパク質が局在するようになり、かつ、切断を受けた微小管の脱重合が抑制される様子が観察された。一方、NMTBDタンパク質はCMTBDより微小管への結合能は強いが、結合したタンパク質当たりの損傷微小管の安定化活性は弱かった。しかし、興味深いことにNMTBDは液-液相分離を引き起こし内部にチューブリンを濃縮する活性があることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MTCL1の2ヶ所の微小管結合部位NMTBDとCMTBDのトランケーションタンパク質をそれぞれ精製して微小管との相互作用を解析した結果、1) NMTBDは微小管の安定化活性は弱いが液-液相分離を引きを越して液中のチューブリンを濃縮すること、2) CMTBDは微小管切断酵素Spastinを添加して微小管に損傷を与えると損傷部位に局在を示して、損傷部位が拡大するのを防ぐ様子が観察できた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、当該年度に得られた結果をもとに、MTCL1の二つの微小管結合部位がそれぞれ、CMTBDが損傷部位を見つけて安定化し、NMTBDが損傷部位に液中のチューブリンを局在させて修復を促進しているのではないかと考え、さらにこれらタンパク質と微小管との相互作用を”微小管の修復”に注目して解析する予定である。また、MTCL1の全長タンパク質またはNMTBDとCMTBDの融合タンパク質を精製して二つの結合部位が協調して微小管の修復を促進するかどうかを調べる準備を進めている。 さらに、共同研究で行なっている微小管とMTCL1微小管結合部位との結合のクライオ電子顕微鏡観察を推進して、原子分解能でこれらの相互作用機構の解明を目指す。
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Causes of Carryover |
当該年度は、十分に実験に必要な器具や消耗品を購入することができたため次年度使用額が生じた。次年度は特に新たに培養細胞からタンパク質精製を試みる予定があるためこれに今回生じた残額を使用する計画をしている。
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