2023 Fiscal Year Research-status Report
核内輸送因子Importin αの安定化機構と包括的なストレス応答の理解
Project/Area Number |
23K05775
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
小川 泰 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 研究員 (70624956)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 核-細胞質間輸送 / 熱ストレス / タンパク質恒常性 |
Outline of Annual Research Achievements |
核-細胞質間輸送は細胞の恒常性維持に必須であり、Importin α/β依存的核内輸送は、核タンパク質の多くの輸送を担う主要な輸送経路である。しかし、一方で、熱などの様々なストレス環境、老化や疾患によって、比較的簡単に輸送が阻害されてしまう。この原因の候補として、申請者はImportin αの熱力学的不安定性を発見した。ヒトImportin αタンパク質の熱変性温度を測定すると、Importin αサブタイプの7種類の内 5種類が高い熱感受性を持つことが分かった。そこで、 37℃の生理的条件下での安定性を、輸送基質に対する結合能で比較してみた。その結果、KPNA1, 2, 7の3種類は37℃でも1~2時間で容易に変性し、結合能を失うことが明らかになった。一方で、シクロヘキシミドチェイス実験を行うと、これらのタンパク質の細胞内半減期は、12時間以上であることから、細胞内には未知のImportin α安定化機構が存在することを示唆している。また、主な局在場所である細胞質において、KPNA2と相互作用するタンパク質群の多くは、シャトルタンパク質であることが明らかになった。そこで、多くの核局在化シグナル(NLS)の存在が、Importin αの安定化に寄与しているのではないかと考え、NLSペプチド存在下でのImportin αの熱安定性を調べた。その結果、MonopartiteタイプとBipartiteタイプの両方のNLSペプチドによってImportin αが安定化することが明らかになった。これらの結果は、熱に感受性のあるImportin αサブタイプは、シャトルタンパク質などを常に核内へ輸送し続けることによって、その機能を維持しているということを示唆し、そのために常にエネルギーを消費していることになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最初の目標である熱感受性Importin αの細胞内の安定化機構は明らかになりつつあるため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの実験結果から、熱感受性Importin αサブタイプの細胞内における安定化には継続的な核内輸送サイクルが重要であることが示唆された。そこで、核-細胞質間輸送活性が低下することが報告されている老化細胞内におけるImportin αの活性を確認する。また今後は、これまで得られた細胞レベルでの制御機構が、生物個体レベルでどれほど重要であるかを明らかにしていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
所属変更に伴い、年度の後半に予定していた物品購入を次年度に延期することにしたため。
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