2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23K05817
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
波間 茜 (久保田茜) 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (70835371)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 花成 / 温度応答 / 概日時計 |
Outline of Annual Research Achievements |
季節変化に伴う気温上昇は、花成をはじめとする植物の様々な生理応答を変化させる。シロイヌナズナの花成ホルモンをコードするFLOWERING LOCUS T (FT) 遺伝子の発現は、野外環境では朝方に高発現しており、これには前日の高温シグナルが重要であることが示唆されている。代表者らは、高温シグナルがFTの転写活性化因子であるCOとbHLH転写因子のタンパク質蓄積量を増加させることで、翌朝のFT遺伝子の発現および花成時期を促進する可能性を見出した。さらに、温度別時系列トランスクリプトーム解析と変異体解析を用いた解析により、朝FTの誘導にはCO-bHLHを介した経路に加え、サリチル酸を介した免疫シグナルが関与する可能性を見出した。これらの結果から、高温が複数の制御経路を介して朝FTの発現を制御する可能性が示唆された。これらの結果から、高温が複数の制御経路を介して朝FTの発現を制御する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
COとPIF7に関連する形質転換体の作出が概ね完了し、表現型解析に移ることができた。また、CO-PIF7以外に朝FTを制御するシグナル伝達経路の存在も見出しつつある。クロマチンループ構造の実験に関してはやや遅れているものの、初年度の進捗としては概ね順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
CO-bHLHの複合体形成によってCOの転写活性がどのように変化するかを明らかにする。まず、クロマチン免疫沈降実験によりCOのFT遺伝子座周辺へのDNA結合能の温度・時間依存的な変化を野生株及びbhlh変異体背景で比較する。すでにCOとbHLHの双方が結合する場所を特定しているため、この部分を中心に、常温及び高温でCOのDNA結合能がbhlh変異体背景で低下する可能性を検証する。また、bHLHがCOの翻訳後制御に関与する可能性についても検討する。これまでにbHLHタンパク質は特に高温下で相互作用因子による翻訳後制御・活性制御を受けることが明らかとなっている。COに対しても同様の制御機構が存在し、bHLHがその制御に関与する可能性をウェスタンブロッティングにより解析する。 一方でco bhlh二重変異体においても、高温による花成促進効果は一部残されていたことから、これら以外の因子が高温下の花成促進に関与する可能性が残された。そこで現在、野生株における温度別時系列トランスクリプトーム解析を用いて高温特異的なFT制御因子の単離を目指している。高温の朝特異的に発現が上昇する転写因子のうち、維管束組織特異的な過剰発現株でFTの発現が上昇する因子を10~20程度絞り込むことに成功した。今後これらの形質転換体の詳細な表現型解析を進めることで高温を介した花成制御機構の全容解明を進める
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Causes of Carryover |
3月のGordon Research Conferenceの出張の際の旅費と宿泊費の負担が年度末まで確定しなかったため全額自己負担で予算を確保していたところ、宿泊費が先方負担となったため、その分の差額が発生した。差額分は今年度の旅費や学会参加費として利用する。
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