2023 Fiscal Year Research-status Report
珪藻葉緑体の高温ストレス応答とセレン誘導性高温耐性機構の解明
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23K05832
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
田中 厚子 琉球大学, 理学部, 准教授 (40509999)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 植物プランクトン / 高温ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
1年目に行う予定であったFIB-SEMを用いた葉緑体の3次元構造観察は定常状態野生株でのデータ解析を継続しておこなっている。高温ストレスによってダメージを受けた野生株の解析まで行う予定であったが,利用している他機関の高圧凍結装置の故障によって頓挫している。そのため,リファレンスとしての定常状態の野生株データの解析を進めつつ,葉緑体オートファジーを連続的に観察する手法の確立を行なった。その結果,これまで集団として認識していた葉緑体の矮小化が同一細胞の経時観察でも同様に確認されたため,葉緑体の矮小化が細胞分裂を経て生じる(つまり二分裂後に肥大化しない)訳ではなく,元の葉緑体サイズが直接縮小して矮小化するという確信を得ることができた。この結果は葉緑体が部分的に消化されている可能性を強く示唆しており,より詳細な葉緑体の部分消化の検出に向けて,複数の電子顕微鏡を駆使した観察を開始している。 さらに2年目に行う予定であったセレン誘導性高温耐性への光の影響の予備実験も開始しており,光と高温の混合ストレス下でのセレンの高温耐性誘導性についての予備データを得ている。現時点では,光強度によって高温ストレス応答が異なるため,セレン誘導性高温耐性の効果にも違いがあることが分かってきた。今後はこれらの予備データを参考にしながら,高温ストレス条件下における光の影響についても検証を進め,自然環境下で生じ得る現象についての理解を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度に予定していた集束イオンビーム走査型電子顕微鏡(FIB-SEM)観察に必須である高圧凍結装置の故障が主な理由である。さらにFIB-SEMデータの解析(対象オルガネラのセグメンテーション)に多大な時間を要している点も理由の一つである。一方で,2,3年目に行う予定だった実験を前倒しして進めており,予定している実験計画全体に対する影響は限定的だと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目に行う予定であった集束イオンビーム走査型電子顕微鏡(FIB-SEM)での観察と解析を2年目も継続して行う点が従来の予定からの変更点となる。それ以外の部分は,原則として当初の計画で進める予定である。
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Causes of Carryover |
使用する予定だった大型機器の故障で実験が長期間に渡って中断した結果,消耗品等の予算執行が極端に減ったため。さらに急遽,別件での長期海外出張があったため,旅費として計上していた学会への参加ができなかったため,旅費の執行がなかったことも理由である。今後の使用計画としては,当初から計画されていた実験のための消耗品への使用に加え,故障した大型機器が修理不能で沖縄県内で当該機器を使用することが不可能になったため,本州の共同研究先での利用のための旅費等にも充てる予定である。
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