2023 Fiscal Year Research-status Report
Functional analyses on the interactive ion-channel networks to generate bimodal rhythms
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23K05843
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
西野 敦雄 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (50343116)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | リズム現象 / 心臓 / 周期的神経活動 / イオンチャネル / ペースメーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトの体においては特に呼吸や心拍,陣痛において顕著にみられるように,生物が示すリズムは静まったり強まったりして,ゆらぐことを大きな特徴としている。単一周期をもった時計的なリズムの生成メカニズムに関する研究はこれまで大きな発展を遂げてきたが,状況依存的に,あるいは非依存的に変調するような,より複雑なリズムが生まれる仕組みについては依然として不明な点が多い。我々は最近,カタユウレイボヤにおいて,組織断片を海水に置くだけで,二重の複合周期をもつリズム(bimodalリズム)を自律的に発する振動子を2種類,新たに発見した。本研究の目的は,これらのbimodalリズムが,特定の組み合わせのイオンチャネルの相互作用にもとづいて自律的に生じているという仮説に基づいて,その生成メカニズムを明らかにすることである。2023年度は特にセカンドメッセンジャーの可視化にかかる顕微鏡のセットアップを主に進めた。また,セカンドメッセンジャーの存在量に応じて動作が変わると想定されれるイオンチャネルに注目してbimodalリズムを示す組織におけるそれらの因子の発現を解析するとともに,それらの因子間の相互作用に関する数理モデルの構築を開始した。少なくとも二つの因子については関与が強く期待できることを2023年度までに明らかにすることができた。また,ホヤの心臓において古くから知られていた「拍動方向の反転」の根本メカニズムとして,ホヤの心臓管には両末端に存在することを明確に示すことができたペースメーカーが,それぞれ特有のbimodalリズムを独立に示すという性質をもつことが必要かつ十分であることを示した論文を発表した(受理は2024年度)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
注目している心臓拍動と幼生運動のそれぞれについて,bimodalリズムを示す組織においてペースメーカー能の発現に関与すると期待している因子の発現を,心臓のトランスクリプトーム解析とin situ hybridizationによって,少なくとも一つの因子について確証することができた。他方,他のいくつかの因子については,幼生では発現しておらず,心臓では発現量が少なくてin situ hybridizationでは検出限界以下だった。今後さらに高感度な方法で試していく予定である。顕微鏡や高感度カメラを譲り受けることができたので,セカンドメッセンジャーの可視化に利用可能な顕微鏡のセットアップが期待以上に進んだ。今後の解析が楽しみな状況にある。変調するリズムを発する数理モデルを既存のものにもとづいて構築できたので,今後得られるデータに適合させていく基盤は整ったと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度セットアップした装置によって,我々が興味の対象としている組織でセカンドメッセンジャーの動態の可視化ができるかを検証していく。また昨年度,注目している組織での発現が確認された因子の発現を抑制する実験を行い,bimodalリズムの乱れやセカンドメッセンジャーの濃度変化の乱れが引き起こされるかを検証する。現在準備している数理モデルの中で,対応するパラメータの変化によってvivoで起こった実験結果と対応する変化がin silicoで説明ができるかも検証していく。
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Causes of Carryover |
セカンドメッセンジャーの動態を観察するための光学装置を多く譲り受けることができたこと,以前取得していた電動ステージを制御するためのプログラミングを透過照明下の条件で高度化するのに注力したこと,bimodalリズムを発する組織で発現していると期待していた因子が確かに発現していることが分かって,より多くの遺伝子クローニングを行うより,当該の因子の機能解析に注力したほうがよいという判断をしたことなどによって,予算の消費が当初見積もりより少なく済んだ。これらは2024年度以降の研究において,蛍光インディケーターやmRNAの人工合成キット,Morpholinoオリゴの購入などの費用に充当することによって,的確で充実した解析を行うことができるよう活用していく。
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