2023 Fiscal Year Research-status Report
Single-Cell RNA-Sequencingを利用した光周期依存的な神経細胞の活動制御機構の解明
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23K05847
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
濱中 良隆 大阪大学, 大学院理学研究科, 講師 (10647572)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 光周性 / 軟体動物 / Caudo-dorsal cell / RNA sequencing |
Outline of Annual Research Achievements |
淡水産の巻貝であるヨーロッパモノアラガイは産卵行動に明瞭な光周性を示す。本種の産卵行動は長日で促進され、産卵は脳神経節にある神経分泌細胞caudo-dorsal cell (CDC) が合成する排卵ホルモンCDC hormone (CDCH) の分泌によって引き起こされる。このCDCの活動は日長によって調節されており、長日飼育個体のCDCは短日飼育個体のCDCよりも興奮性が高いことが申請者らの研究で明らかになっている (Hamanaka and Shiga, 2021)。この光周期依存的なCDCの興奮性の差を生み出す生理機構を解明するため、私はCDCの前ニューロンに着目した。CDCに光周期情報を送るニューロンは未だ不明であるが、CDCには正体不明のニューロンがシナプス入力することが知られており (Roubos, 1975)、CDCには前ニューロンが放出する神経伝達部物質の受容体が発現すると考えられる。そこで、CDCに発現する神経伝達物質の受容体遺伝子の解明を通して、CDCの前ニューロン候補を特定することを研究の目的とした。方法としては、単一CDCのRNA sequencingでCDCに発現する全 transcriptのデータセットを取得し、その中から神経伝達物質の受容体遺伝子を明らかにする。長日・短日飼育個体からの単一CDCのサンプリング、およびRNA sequencingデータの取得はすでに完了している。今後は、このRNA sequencingデータの解析を通して、CDCに発現する神経伝達部物質の受容体遺伝子を解明する。加えて、長日―短日条件間で発現量の異なる遺伝子を探索することで、光周期依存的なCDCの興奮性の差をもたらす分子基盤の解明も並行して進めて行く。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
単一CDCに発現する全transcriptの配列情報の取得に時間を要しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、RNA sequencingデータを用いたコンピューターでの発現解析を通して、CDCに存在する神経伝達部物質の受容体遺伝子を解明する。次に、候補となる受容体のリガンド抗体を使って、候補リガンドを発現するニューロンを免疫組織化学法で形態学的に同定する。加えて、CDCニューロンとの二重標識により、両者の神経接続関係を詳細に解析し、機能的な連絡の有無を検討する。また、上記のリガンド分子を細胞内膜電位の記録中のCDCに投与することでCDCに対する生理学的働きを電気生理学的に解明する。以上により、光周期依存的なCDCの興奮性の切り替えに関わる上流ニューロンの正体を明らかにする。
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Causes of Carryover |
電気生理学実験の実施を次年度以降に変更したため、データ取得装置の購入に充当する予算が次年度に持ち越された。持ち越した予算は、データ取得装置の購入に充てる予定である。
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