2023 Fiscal Year Research-status Report
Molecular mechanism of fish extraretinal photoreception system
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23K05850
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
佐藤 恵太 岡山大学, 医歯薬学域, 助教 (80725622)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | オプシン / 光受容 |
Outline of Annual Research Achievements |
複数の遺伝子の発現を、動物組織試料上で同時に検出する技術であるSignal Amplification By Exchanging Reaction-Fluorescent In Situ Hybridization(SABER-FISH)法を導入した。これにより光受容タンパク質の遺伝子を、細胞の種類を特定するマーカーとなる他の遺伝子と同時に検出することが容易になった。SABER-FISH法によってメダカの下垂体で光受容タンパク質を発現する細胞集団を解析した結果、これまでメダカ下垂体に発現している事がわかっていた光受容タンパク質(Opn5m, Opn5L1c, Opn3)についてそれぞれ特定のホルモン産生細胞・ホルモン非産生細胞の細胞集団に特異的に発現していることを見出すことができた。このうちOpn5mは下垂体MSH細胞に発現することを明らかにし、これが光を受容して細胞内カルシウム応答を惹起し、ホルモン放出を促して全身の色素細胞に作用すると言う働きをするところまで解明することができた。SABER-FISH法により今後の組織学的解析でもこれまでより高解像度な遺伝子発現情報を得られ、新たな生理機能の解明につながることが期待できる。 孵化5日齢のメダカを用い、脳や目以外の領域に光受容タンパク質の遺伝子が発現しているかどうかについて組織学的な解析を行った。その結果、紫外光感受性の光受容タンパク質が全身の白色素胞・黄色素胞、もしくはその前駆細胞に発現していることを発見した。これまでの解析では目や脳などの中枢神経系における光受容機能に着目して解析を進めてきたが、末梢においても多数の光受容細胞があることがわかったため、今後これらの細胞における光受容についても勘案して生理機能の解析を進める必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
非視覚性の光受容の解析のために作製した眼球を欠損したメダカ変異体(rx3 KO)について、ある時期に飼育数を絞って管理していたところ、うまく産卵しなかったことから、これまで用いていたrx3 KOの系統が絶えてしまった。これにより眼球欠損メダカについて十分な実験を行うことができなかった。この系については、今後の実験のため再度KOメダカを作製する予定である。 一方、分子組織学的な解析のために導入した新たな手法(SABER-FISH)は今後の光受容タンパク質の組織学的解析においてメダカに限らず広く応用可能であり、今後の組織学的解析に置いてより高解像度な情報が得られるようになり、光受容タンパク質の機能解析が促進されると期待できる。実際これまでSABER-FISH法によって中枢神経系、特に下垂体で光受容タンパク質を発現する細胞の同定や、稚魚の表皮で紫外光感受性光受容タンパク質を発現する細胞の同定が可能となった。これは従来のジゴキシゲニン修飾リボプローブ-アルカリフォスファターゼ修飾抗ジゴキシゲニン抗体-NBT/BCIPによる発色の系やその派生である蛍光検出法では、多重染色の難しさや感度の点から困難であったことである。今後もこの手法を用いた組織学的解析を進展させると同時に、手法の改良にも取り組んでいく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
眼球を欠損したメダカ変異体(rx3 KO)、及び視覚の光受容機能を失ったメダカ変異体(gnat1/gnat2 KO)を作製する。これらの変異体について様々な波長を用いた光応答の実験を行うことで、非視覚性の光行動応答がどのような波長感度特性を持つかを検証する。メダカの光受容タンパク質はタンパク質レベルではその波長感度特性がほぼ既知であるため、行動の波長特性と比較することで、その行動を惹起する光受容タンパク質を特定できる可能性がある。もし波長感度特性のみから候補となる光受容タンパク質を特定できた場合、その遺伝子のKOメダカを作製し、更に光行動応答の実験を行う。 中枢神経系では下垂体以外の脳領域においても多数の光受容タンパク質がそれぞれ異なる特徴的なパターンで発現することがわかっているが、それぞれがどのような細胞なのかはまだわかっていない。そこで神経細胞・グリア細胞の種々のマーカー遺伝子を用い、SABER-FISH法により光受容タンパク質陽性細胞の細胞同定を行っていく。 稚魚全身の光受容タンパク質の発現について、白色素胞・黄色素胞に発現することがわかった紫外光感受性光受容体以外についてはまだ未解析である。よって残りの光受容タンパク質についても、稚魚の全身を用いた組織学的解析を行い、脳・目に限らず末梢の光受容タンパク質陽性細胞の組織学的解析(発現しているか否か、その細胞は一体何か)を進める。
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