2023 Fiscal Year Research-status Report
ショウジョウバエにおける個体間相互作用による睡眠制御機構の解明
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23K05855
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
冨田 淳 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 准教授 (40432231)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ショウジョウバエ / 睡眠 / 個体間相互作用 / 闘争行動 / ドーパミン / 嗅覚 / 生物発光 |
Outline of Annual Research Achievements |
睡眠は概日時計と恒常性維持機構によって、そのタイミングと量が制御される。さらに、社会的および環境的要因によっても制御されるが、そのような経験依存的な睡眠制御メカニズムについては未解明な点が多い。ショウジョウバエDrosophila melanogasterの睡眠計測は、通常、ガラス管に入れた単独の個体を用いて行われる。我々は、これまでの研究で、ガラス管に複数の個体を入れて睡眠を調べ、ドーパミントランスポーター遺伝子の機能欠失変異により睡眠量の少ないfumin変異体のオス2匹では、1匹の場合に比べて、昼の後半に活動が集中し、夜間の睡眠量が著しく増加することを発見した。昼の後半の活動量増加は、オスに特徴的な行動である闘争を反映していると考えられた。 本研究では、闘争と睡眠のどちらの制御にも関わるT1ドーパミンニューロン(Tomita et al., Front. Neurosci., 2021)に着目して、個体間相互作用による睡眠制御機構を分子・神経回路レベルで解明することを目的とする。 触覚を切除したハエや嗅覚変異体を用いて、本研究に先行して行った解析から、fumin変異体のオス2匹での睡眠量の増加には、嗅覚系の入力が関与することが示された。2023年度に行った研究により、睡眠量の増加には、他のオスの匂いと個体間相互作用の経験の両方が必要であることが示唆された。また、T1ドーパミンニューロンのシナプス伝達を抑制したfumin変異体のオス2匹の睡眠量は、抑制していないオス2匹と比べて有意に変化しなかったことから、fumin変異体のオス2匹でみられる睡眠量の増加に、T1ドーパミンニューロンは関与しない可能性が考えられた(磯部ら、未発表)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要に記載した内容に加えて、2023年度は、ショウジョウバエのオス2匹をペアにしたときの睡眠や闘争をビデオ解析により定量する実験系の導入も試み、睡眠に関しては定量できるようになった。 本研究では、睡眠や闘争などの行動を測定しながら、同時にT1ドーパミンニューロンの活動を生物発光を利用して測定する系を確立し、オス同士の個体間相互作用による睡眠誘発のメカニズムの解明を目指すが、そのために必要なトランスジェニックハエがまだ作成できていないことから、進捗状況はやや遅れているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、生物発光を利用した神経活動測定に用いるトランスジェニックハエを作成し、測定を開始する。2023年度の研究によって、T1ドーパミンニューロンが、fumin変異体のオス2匹でみられる睡眠量の増加に関与しない可能性が示されたので、他のドーパミンニューロン群についても検討する。具体的には、CaLexAシステム(Masuyama et al., J. Neurogenetics, 2012)を用いて、オス2匹をペアにしたときに活性化するドーパミンニューロン群を調べる。また、オス同士の個体間相互作用による睡眠誘発に関わる匂い物質や嗅覚受容体の同定も試みる。
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Research Products
(7 results)