2023 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of neural mechanisms and physiological significance of social development by tactile stimulation in infant mice
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23K05859
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Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
茂木 一孝 麻布大学, 獣医学部, 教授 (50347308)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 触刺激 / 社会性発達 / 母子間インタラクション / マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳類動物は幼若な仔を出産し、仔は母親のみが出す母乳を栄養源に成長するように進化してきた。そのため出産直後からの母子間インタラクションは仔の発達に多大な影響を及ぼす。ヒトでは触覚経験を早期に遮断された子の観察などから、幼少期に抱きしめられたり、撫でられたりすることが人間性の発達に欠かせないことが示唆されてきた。哺乳類動物の親も出産直後から仔を舌で舐める行動(リッキング)や毛づくろい行動で仔に絶えず触刺激を与えており、仔が幼少期に受けるリッキングの多さによってストレス内分泌軸の発達や成長後の母性行動発現が変化することが示されてきた。本研究は母から受ける触刺激が仔の社会性発達に与える影響とその神経メカニズムを解明し、幼少期の触刺激による社会性発達変化の真の生理的意義も明らかにする。具体的に、皮膚感覚の中でも撫で刺激を特異的に伝達する神経系に着目し、撫で感覚神経特異的に発現するMrgprb4分子のプロモーター下流にCre遺伝子を挿入したMrgprb4-CreマウスとDREADDsシステムによる薬理遺伝学的手法を用い、幼少期のみ撫でられた感覚が抑制された仔マウスを作出して社会的な行動表現型の発達変化を調べる。2023年度はこの手法での仔マウス作出方法を確立することができ、作出したマウスを用いて各種の社会行動テストを実施しているところである。他に、幼少期に受けた刺激で活性化した神経細胞を長期的に追跡できるTargeted Recombination in Active Populations (TRAP)遺伝子改変マウスを用い、新生仔期に受けた撫で刺激で活性化し、将来母となって仔へリッキングする際にも活性化する“撫で刺激の記憶細胞”候補も探索する。2023年度はこの記憶細胞候補を探索するための実験系および脳の染色法を確立することができた。今後例数を増やしていく必要があるが、現在いくつかの神経核にこの記憶細胞候補が局在する可能性を見出している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通りに、Mrgprb4分子のプロモーター下流にCre遺伝子を挿入したMrgprb4-CreマウスとDREADDsシステムによって幼少期の撫で感覚を抑制する実験系を確立し、作出されたマウスの行動表現型を解析できている。またTRAP遺伝子改変マウスを用いた撫で刺激の記憶細胞候補を探索する実験系も確立し、この記憶細胞候補が局在する脳部位の探索を進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
幼少期の触刺激による社会性発達変化の生理的意義を明らかにするため、まずは幼少期に撫で感覚が抑制されたマウスを用い、様々な社会行動をテストから顕著に変化する社会行動の特定を目指す。またTRAP遺伝子改変マウスを用いた撫で刺激の記憶細胞候補の探索においても、引き続き例数を追加してゆくことで記憶細胞候補が局在する脳部位の特定を目指す。
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Research Products
(10 results)