2023 Fiscal Year Research-status Report
平衡選択の痕跡から探る出アフリカ移住の要因と適応進化
Project/Area Number |
23K05870
|
Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
藤戸 尚子 国立遺伝学研究所, ゲノム・進化研究系, 特任助教 (90751066)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井ノ上 逸朗 国立遺伝学研究所, ゲノム・進化研究系, 教授 (00192500)
颯田 葉子 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 教授 (20222010)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 適応進化 / 免疫 / 平衡選択 |
Outline of Annual Research Achievements |
非アフリカ人の祖先は約7万年前にアフリカを出て、世界に拡散した。この時期にどのような出来事があったのかをヒトのゲノムに残る適応進化の痕跡から探ることを計画した。その過程で、ヒトの抗ウイルス免疫に関連する遺伝子に複数の自然選択の痕跡が発見された。この自然選択はウイルス感染爆発によるものと考えらえる。自然選択の年代を推定したところ、約8万年前に全集団の共通祖先で1回、5-6万年前に非アフリカ人の共通祖先集団で1回と、少なくとも2回の自然選択イベントがあったことが判明した。これはそれぞれ、出アフリカ移住直前の時期と、非アフリカ人の共通祖先集団が西アジアに滞留していた時期にあたる。出アフリカ移住の前後に最低2回の大規模なウイルス感染爆発があったことが示唆された。自然選択を受けた2つのハプロタイプは約100万年前に分岐したと推定される。古代人ゲノムを用いた解析から、古代人データの残る4万年ほど前から現在までの間は、いずれのハプロタイプも高頻度で維持されてきたことが明らかになった。ネアンデルタール人やデニソヴァ人も、このうちの一つのハプロタイプを有していた。ここまでの成果を論文としてまとめ、現在国際誌に投稿中である。本研究ではまた、このローカスの近傍にある大型欠失多型の果たした役割について検討した。このローカスで見られる自然選択は平衡選択のカテゴリーに分類されるため、平衡選択としての特色をシミュレーションを用いて解析した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
出アフリカ移住前後の自然選択を検出し、ここまでの成果を論文原稿としてまとめている。また当初の計画を超えて、シミュレーションにより平衡選択のパターンの検討を行なっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き研究を継続し、論文を投稿、発表する。成果を学会で発表する。同様の痕跡を残す領域をゲノムから探すことを計画している。
|
Causes of Carryover |
今年度中の論文掲載料の発生を見込んでいたが、次年度に持ち越した。該当部分は次年度に論文掲載料として支出予定である。
|