2023 Fiscal Year Research-status Report
紅藻クシベニヒバ属の分子系統,種境界,生殖的隔離に関する研究
Project/Area Number |
23K05884
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小亀 一弘 北海道大学, 理学研究院, 教授 (80215219)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | クシベニヒバ属 / 分類 / 分子系統 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題に関してこれまで本研究室で決定した北海道産クシベニヒバ属のDNA塩基配列に,DNAデータバンクからダウンロードしたDNA塩基配列情報を加え,分子系統解析を行った。その結果,北海道産Ptilota filicina(クシベニヒバ)は,Ptilota filicinaのタイプ産地を含む系統と異なるグループであり,未記載種である可能性が示された。さらに,北海道産Ptilota filicinaは,太平洋産と日本海産の2グループに分けれ,2種を含むことが示唆された。厚岸産のサンプルは,独自の系統を示し,その形態から,千島列島をタイプ産地とするPtilota polydentata Perestenko の可能性が高い。もし,そうであれば,日本新産種となる。Ptilota phacelocarpoides (コバノクシベニヒバ)は,Ptilota filicinaと同一種とされることもあったが,今回の系統解析では,2種は別種であることが示された。北海道産Ptilota asplenioidesは,カナダのブリティッシュコロンビア産のサンプルと遺伝的に別種であることが示唆された。P. asplenioidesのタイプ産地がアラスカであることから,北海道産のものは未記載種である可能性が高い。 クシベニヒバ属の採集を厚田,函館,有珠,室蘭,東静内で行い,分子系統解析,形態観察,培養株の確立の材料とした。分子系統解析のために,DNA塩基配列の決定を進めた。交雑実験に使用するため,クシベニヒバの培養株を確立し,成熟に必要な培養条件を検討した。その結果,クシベニヒバの成熟には,低温条件を経験することが必要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
クシベニヒバでは,核ゲノムのマーカーとしてリボソーム遺伝子のITS領域も用いる計画であるが,同一個体に複数の配列が存在しているようで,塩基配列をうまく決定できていない。また,採集で得られた個体数が期待より少なく,塩基配列を決定した個体数も計画よりも少ないため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画にあるように,北海道において,クシベニヒバ属の採集を行い,葉緑体ゲノムのrbcLおよびミトコンドリアゲノムのCOI遺伝子の塩基配列の決定を進める。クシベニヒバでは,核ゲノムのマーカーとしてリボソーム遺伝子のITS領域も用いる計画であるが,同一個体に複数の配列が存在しているようで,塩基配列をうまく決定できていない。今後は,配偶体を用いたり,PCRプライマーを工夫するなどして問題解決を目指す。クシベニヒバの交雑実験については,太平洋産と日本海産の培養株を用いて行い,両グループ間の生殖的隔離状況を調べる。培養株が確立でき,また,必要な成熟条件も明らかとなったので,交雑実験を実施する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:交雑実験で使用するロータリーシェーカーを購入する予定であったが,培養株の成熟条件検討が遅れたため,購入まで至らなかったため。
使用計画:遺伝子解析用の試薬,消耗品として使用する。
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