2023 Fiscal Year Research-status Report
Evolutionary mechanisms underlying participation, breakaway and transition of Müllerian mimicry rings in millipedes
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23K05891
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
田邊 力 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 教授 (30372220)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 擬態 / ヤスデ / ハエ / 警告色 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、ヤスデ類のミュラー型擬態を含む警告色の多様化の進化メカニズム解明にあたり、ハエ類の捕食寄生がヤスデ警告色の多様化に与える影響に着目している。今まで得られた結果は、ハエ類の寄生率とヤスデ警告色モルフの相関といった間接的なものであり、直接に因果関係を示すものではなかった。そこで、ハエ類がヤスデ類を選好して寄生しているかどうかを実験で直接的に実証することを目的として、岐阜地方にて野外実験を行った。予備実験では、熊本地方にてヤスデを個別に小型容器に入れて、野外に2週間程度設置して、ヤスデが死なないことを確認した。岐阜地方での実験では、2種のヤスデを個別に小型容器に入れ、2週間野外に設置し、ハエがどちらのヤスデ種により寄生のために産卵するかを確かめた。結果は、ハエは、どのヤスデにも産卵しておらず、寄生データは得られなかった。原因としては、ヤスデを個別に小さな容器に入れる方法では、ハエが産卵しづらいこと、実験時期が10月と遅すぎたこと、などが考えられた。次回はより大型のコンテナにヤスデを複数個体入れたものを、8月から9月にかけて野外に2週間ほど設置し、ハエに産卵させる方法を検討する。 上記の野外実験の実施と並行して、岐阜および三重地方にて、ハエ捕食寄生の野外データを取得した。ハエに寄生されたヤスデを熊本の研究室に持ち帰り、飼育にてハエを羽化させる予定であったが、全てのハエの卵もしくは幼虫が輸送中または、飼育環境下で死亡し、輸送、飼育条件についての課題が明らかとなった。また、これらの作業を通じて、マムシ、ヤマビルの有害生物への対策が、これも課題として浮かび上がり、手袋、忌避剤、長靴等の装備を整えた。 これらの研究成果について、第71回日本生態学会大会にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題では、ヤスデ類の分布、体色解析、系統解析、ヤスデに寄生するハエ類の寄生解析等、多方面の項目についてデータを得て解析する必要があり、研究課題全体を進めるためには多大な時間と労力を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
雇用の活用:本研究課題では、多岐に渡る多数のデータの取得、クリーニング、整理、及び野外実験の準備が必要になる。これらの遂行には多大な労力を要するため、雇用による技術支援を活用する。
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Causes of Carryover |
(1)次年度使用額が生じた理由:研究実績の概要で述べた野外実験の準備と実施に4ヶ月を要したこと、及び本研究課題に係わる最初の論文執筆に時間を要したことで、他の作業項目に時間を配分することが難しくなった。 (2)使用計画:今年度4月から8月は論文執筆を優先させ、9月以降は野外実験を中心に研究を進め、そこでの準備、旅費、データの整理と解析に助成金を使用する予定である。
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