2023 Fiscal Year Research-status Report
染色体サイズの劇的な増加と減少にはどのようなDNA配列が関与しているのか
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23K05908
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
星 良和 東海大学, 農学部, 教授 (70332088)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 染色体 / ゲノム / モウセンゴケ |
Outline of Annual Research Achievements |
小型染色体をもつコモウセンゴケ(x=10)はすでにゲノムについてはすでに配列が公表されているが、中型染色体をもつモウセンゴケについては申請時には未公表の状態であった。しかし初年度の交付後にモウセンゴケのゲノムリーディングが進行しているとの情報を入手したため(現段階では非公開)、予定を変更し、本配列を非公開で利用することを前提に両種のゲノム配列情報の解析準備を行った。このため、次年度に行う予定であったFISHのプローブの選抜を条件検討も含めて実施した。これについては、平成23-25年度基盤研究(C)に、モウセンゴケ、コモウセンゴケおよびトウカイコモウセンゴケを用いて、ゲノム配列のディファレンシャルディスプレイ法によって得られた結果を踏まえ、過去の結果ではOPC-01プライマーは、モウセンゴケでは安定して検出されるが、トウカイコモウセンゴケ(コモウセンゴケとモウセンゴケの両ゲノムを有する複二倍体種)では安定的なバンドを得られていなかったため、PCRでのゲノムからの増幅について再度検討を行ったところ、モウセンゴケとトウカイコモウセンゴケで共通のバンドを得られることを確認した。尚モウセンゴケとコモウセンゴケ(日本産の四倍体)ののゲノムがGC含量の決定をFCMで行い、ゲノムサイズの大きいのモウセンゴケのGC含量がコモウセンゴケよりも有意に高いことが明らかとなった。すでにOPC01配列をプローブにトウカイコモウセンゴケの染色体でFISH解析を行っており、この結果、トウカイコモウセンゴケがもつ60本の染色体のうち、モウセンゴケ由来の20本全体に分散的なシグナルが確認されたことと踏まえて、これら成果をとりまとめ1報目の論文を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実績の概要でも記載したとおり、今回対象とした植物材料の1つがゲノムの解読が申請時には未解読の状態であったが、本研究の初年度の段階でゲノムリーディングされたため、現在は非公開の情況ではあるが、この配列情報を利用できる準備を行った。このため当初の計画は一部変更とはなったが、計画としてはおおむね順調であり、今後はゲノムの情報を利用して、目的とする配列からプローブの開発など当初の研究計画の核心的な課題の実験に注力できることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は、種分化と染色体進化が関連している被子植物の中でも、近縁種間で染色体の数は同じでありながらそのサイズが大きく異なる原因を探ることにある。この原因を明らかにするための植物材料として、これまで多くの細胞遺伝学的知見を有するモウセンゴケ属の中でも、交配可能なコモウセンゴケとモウセンゴケ(ハプロイドゲノムサイズの差が4~5倍)の2種を材料に選び、初年度では、これら2種のゲノム配列情報を解析することができたため、今後は、環境適応能力の獲得・種の多様化を伴う染色体サイズの変化をもたらすDNAとはどのような配列を有するのかを、両種のゲノム配列をインシリコ条件で比較し、その後、候補配列を実際にプローブとしてFISH解析により実験的検証を行なっていく。
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Causes of Carryover |
初年度に、ゲノム解読のための経費の削減ができたことから、次年度に繰り越しを行った。
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