2023 Fiscal Year Research-status Report
環境勾配の大きい西表島網取湾における大規模白化したサンゴ群集の回復過程の解明
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23K05938
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
中村 雅子 東海大学, 海洋学部, 准教授 (50580156)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村上 智一 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 水・土砂防災研究部門, 主任研究員 (80420371)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | Corals / Mass bleaching / Mesophotic coral reefs / Recruitment |
Outline of Annual Research Achievements |
サンゴ群集の大規模白化は、多量なサンゴの斃死を伴い、サンゴ礁生態系を衰退させる。大規模白化の発生周期は短くなっており、今後のサンゴ礁域における保全対策の構築には、大規模白化後のサンゴ群集の回復過程の理解が急務である。本研究では、サンゴ群集への白化の被害の実態と、その回復過程の把握、さらには回復を左右する物理・生物学的要因の解明を目的として、2016年夏季と2022年夏季に大規模な白化を経験した西表島北西部の網取湾のサンゴ群集を対象として調査研究を行った。網取湾は、水平および鉛直両方向の環境勾配が大きいことで知られ、湾内のサンゴ群集の白化後の回復過程は地点間で顕著に異なることが予想された。そこで、2022年夏季に起こった大規模白化からの回復過程の水平および鉛直方向の異なる地点において、実態把握を行った。2023年度は、水平方向の11地点と鉛直方向の異なる水深帯で、サンゴの群集構造調査と幼生定着量調査を実施した。その結果、水平および鉛直方向でサンゴ群集構造が顕著に異なることが明らかとなった。特に、2022年夏季の白化率が高かった水深でサンゴの被度および多様性が低下しており、また、2016年の大規模白化の影響が比較的少なかった地点でサンゴが著しく減少していることが明らかとなった。また、水平方向の幼生定着量は2022年に比べて顕著に減少していた。一方で、鉛直方向では、数が少ないものの深場のサンゴ礁まで新規の幼生定着が観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、2022年夏季の大規模白化の影響を概ね把握することができた。ただし、当初予定していた定点でのサンゴ群集構造の把握が悪海況により予定通りに進んでいないため、今後、この点について調査を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、水平方向の11地点と鉛直方向の異なる水深帯で、サンゴの群集構造調査と幼生定着量調査を実施していく。今年度は鉛直方向の調査を異なる2地点で実施し、水深間の比較だけでなく、地点間での比較も行う。また、定点でのサンゴ群集構造調査を実施していく。
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Causes of Carryover |
2023年度は悪海況やコロナ罹患などに見舞われ、定点でのサンゴ群集調査が予定通りに進まなかったため、旅費などが予定通りに使用できなかった。関連して、サンゴ群集の画像解析のための学生補助に対する謝礼などの支払いが発生していない。2024年度は、定点での調査を進めていくために使用していく予定である。
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