2023 Fiscal Year Research-status Report
生体・細胞の全遺伝子発現変動に基づく急性低酸素応答を駆動する主要遺伝子群の解明
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23K05955
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
安河内 彦輝 関西医科大学, 医学部, 講師 (60624525)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日笠 幸一郎 関西医科大学, 医学部, 教授 (10419583)
前田 享史 九州大学, 芸術工学研究院, 教授 (90301407)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 低圧低酸素 / 高地適応 / チベット高地集団 / ネパール / エピゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト生体内における低酸素生理応答は、概して初期応答から後期応答、永続的応答へと曝露時間に依存して段階的に進行するが、特に生体レベルでの初期・後期応答に関する分子機序の知見は未だ乏しく、低酸素適応機構の全容を解明するには至っていない。そこで本課題では、低酸素応答機構を分子・細胞・生体レベルで包括的に分析することで、その適応機構の全容解明に寄与することを目指す。今年度は、標高3750mに位置するネパール国ムスタン地域ツァラン村に地域住民のゲノムデータおよびDNAメチル化データの提供を受け、解析をおこなった。まず、多血症リスクの観点から高地適応に寄与すると考えられているEPAS1遺伝子多型(rs13419896:Li et al. 2019)のAAホモを適応型、GGホモを非適応型として群分けし(各4名)、約86万CpG座位のDNAメチル化レベルを比較した。その結果、EPAS1領域にあるCpG座位で顕著に非適応型群のメチル化レベルが高く、慢性多血症リスクを軽減している可能性が見出された。これらの被験者を含む48名に対して約50万座位の一塩基バリアント(SNV)を調べたところ、その遺伝的な違いは必ずしも今回観察されたメチル化パターンと一致しなかった。これは、EPAS1の遺伝子制御機構が高地の低圧低酸素環境に対する生理応答に強く影響している可能性を示唆している。しかし、本結果は被験者8名をもとにしたもので検体数が少ない。そのため、現在追加解析により検証をおこなっているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、環境適応研究実験施設を活用した低圧低酸素実験の被験者サンプルを用いたトランスクリプトーム解析を実施する予定であった。しかし、今年度は事情により当該実験の被験者サンプルが入手できなかった。そこで、兼ねてより共同研究の計画があった長崎大学の研究チームから、ネパール国ムスタン地域ツァラン村のチベット高地集団のゲノムデータの提供を受けた。今回の解析で、高地適応的遺伝形質を持たない可能性のある個体が、可塑的な遺伝子発現抑制により非適応的形質を補償している可能性があるという興味深い結果が得られている。したがって、研究の進捗状況はおおむね順調に進展していると考える。現在はSNVの解析もおこなっており、今後の研究の発展が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に実施できなかった低圧低酸素実験の被験者サンプルを用いたトランスクリプトーム解析をおこなう。実験を実施する研究分担者とすでに議論しており、サンプルは2024年度中に入手できるはずである。また、実験で得られた結果をもとにターゲット遺伝子に変異を導入したHUVECなどの細胞を用いて低酸素実験をおこない、低酸素曝露前と曝露中の遺伝子発現パターンの差異を調べる予定である。今後、これらの解析を並行しておこなうことで、効率的に研究を推進していくことを目指す。
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Causes of Carryover |
前述の通り、当初計画していたトランスクリプトーム解析や細胞実験を実施することができなかった。そこで、次年度に繰り越すことでその分析費用を確保する必要があったためである。したがって、今回の繰り越し予算をそれらの分析費用に充てる予定である。次年度分は前年度の検証研究や学会参加旅費、論文掲載料などに使用する予定である。
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Research Products
(1 results)