2023 Fiscal Year Research-status Report
大脳特異的なPAKシグナル阻害タンパク質によるシナプス形成調節
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23K05996
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
榊原 伸一 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (70337369)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | inka2 / スパイン / 中枢神経系 |
Outline of Annual Research Achievements |
正常な脳発達においてニューロンの樹状突起スパインの数や形態のコントロールは神経可塑性の獲得・維持に重要であり,精神発達障害や幾つかの精神疾患では大脳皮質や海馬のスパイン密度の変化や異常な形態変化が起きる。Inka2は成体においては大脳皮質および海馬を含む前脳領域のニューロンに発現し、Inka2欠損マウスでは樹状突起スパインの低形成が起きること,本研究ではInka2タンパク質がPAK活性中心に結合してそのキナーゼ活性を抑制することを見出した。Inka2がスパイン動態を調節する分子・細胞メカニズムを詳細に解明し,Inka2がシナプス可塑性で担う役割を明らかにする。これまでの研究からInka2タンパク質内の33アミノ酸の短いiBOXドメインがPAK4の活性中心に直接結合してキナーゼ活性を抑制する可能性が示唆されている。本年度はこのiBOXペプチドをCAGプロモーター下でP2A配列を介してEGFPと共に発現するAAVベクターを構築してニューロンおよびヒト癌株化細胞に導入し,PAKキナーゼ活性が阻害されるか、スパインの形成に変化があるか検討を行った。さらにInka2 cKO胎仔から調製した大脳皮質ニューロン初代培養に,PSD95-GFPをアデノ随伴ウイルスベクターにより導入し,樹状突起スパインをライブイメージングにより可視化する。その結果iBOX発現はアクチンの重合変化介して細胞形態変化を引き起こす事が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
有効なInka2発現AAVベクターの設計と作製に時間を要したことで、初代培養ニューロンへの導入実験に遅れが生じた。AAV導入系の構築が完了したため次年度は実験を加速できる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
Inka2欠損マウス大脳皮質をFIB/SEMトモグラフィー法および通常の透過型電顕で観察し,スパイン構造を類型化して形態的側面を明らかにする予定である。またInka2の制御ネットワークを包括的に理解するため,Inka2 cKOおよび野生型マウス大脳皮質からpreとpostを含むシナプス画分を分画し,リン酸化タンパク質プロテオーム解析を行いInka2下流で変動するタンパク質,シナプス部位でPAK/cofilin経路以外に変動する未同定のシグナル経路を網羅的に同定する予定である。
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Causes of Carryover |
AAVベクターの作成がやや遅れたため、その後に使用予定であった消耗品類の購入計画に遅れが生じた。
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