2023 Fiscal Year Research-status Report
パーキンソン病の病態生理と脳深部刺激療法の治療メカニズム-モデルサルにおける研究
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23K06008
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
知見 聡美 生理学研究所, 行動・代謝分子解析センター, 助教 (30396262)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 大脳基底核 / 小脳 / パーキンソン病 / モデルサル / 神経活動 / 機能的MRI / 光遺伝学 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳内に電極を埋め込み留置し、高頻度で連続的に電気刺激を加える脳深部刺激療法 DBS は、進行期のパーキンソン病において症状改善に著効を示す。DBSの治療メカニズムを明らかにするため、2023年度は健常サルにおいて実験を行った。DBSのターゲットである視床下核に投射する2つの脳部位 1) 大脳皮質、2) 淡蒼球外節 の神経細胞に、それぞれ別の個体においてチャネルロドプシを発現させ、視床下核内の軸索ターミナルに光照射を行うことにより、大脳皮質-視床下核経路と淡蒼球外節-視床下核経路をそれぞれ選択的に刺激した際の機能的 MRI を撮像し、全脳の活動を可視化した。大脳皮質-視床下核投射はグルタミン酸作動性の興奮性であり、刺激によって視床下核に興奮性信号が観察された。それに加えて小脳皮質にも興奮性信号が観察されたことから、大脳基底核だけでなく小脳の活動変化も症状改善に寄与する可能性があることが示唆された。一方、淡蒼球外節-視床下核投射はGABA作動性の抑制性であるが、神経活動を記録しながら近傍に光照射を行うことが可能な「オプトロード」を視床下核に刺入して光を照射した際の近傍の神経活動を電気生理学的に調べたところ、発火が強く抑制されることがわかった。その際の全脳の活動を機能的MRIで調べたところ、大脳基底核の入力部である線条体の興奮性が増大していることがわかった。これにより大脳皮質から入力された情報が通りやすくなり、症状を改善している可能性がある。2024年度は、パーキンソン病モデルサルにおいて同様の実験を行い、症状の改善も評価することにより、DBSの症状改善メカニズムを明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに健常サル4頭において光遺伝学と機能的MRIを組合わせた「opto-fMRI」実験を行うことにより、視床下核DBSによって刺激される神経経路を経路ごとに選択的に刺激することによって、全脳における活動変化を可視化することに成功した。2023年度は初年度なので、全体の実験計画から考えると、十分な進展と言える。2024年度にはパーキンソン病モデルサルにおいて同様の研究を進めることにより、症状改善に寄与する神経経路の特定と、症状改善の神経メカニズムを明らかにできると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度には、健常サルにおいて脳深部刺激療法が脳内のどの部位の活動をどのように変化させるのかを調べる実験を進めてきた。今後は症状改善に寄与する神経経路の特定と、症状改善の神経メカニズムの解明に進むため、パーキンソン病モデルサルにおいて、同様の実験を行う予定である。 また、パーキンソン病の病態生理、特に振戦の神経メカニズムを調べる実験において、これまでに小脳核の神経細胞において、振戦周期に一致する周期的な神経活動を観察することができた。この実験も精力的に進め、論文発表を目指したい。
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Causes of Carryover |
2023年度にナショナルバイオリソースよりニホンザルの入手を予定していたが、出荷頭数が少なく、本研究課題に使用する分を入手することができなかった。2024年度の入手を予定している。
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