2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23K06028
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
牧野 一石 北里大学, 薬学部, 教授 (20302573)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 触媒的アミド化反応 / 有機リン化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究実施にあたり,触媒候補分子となる有機リン化合物の合成について検討した。触媒候補分子の合成については,炭素―リン結合の導入方法が問題となるが,触媒量のニッケルまたはパラジウム錯体を用いたクロスカップリング反応,トリアルキルホスファイトを用いたアルブゾフ反応,ジアルキルホファイトに塩基を作用させることで調製した金属試薬による求核置換反応について検討したところ,反応基質によるものの,これら3つ方法が有効であることを確認した。次の課題となるリン酸無水物結合の形成については,熱的な脱水反応,縮合剤による縮合反応,リン塩化物を経由する方法について検討した。熱的な脱水反応では複雑な混合物を与え,縮合剤による縮合反応では縮合剤が付加した副生成物が得られるのみであった。一方で,リン塩化物を経由する方法については,分子内の2つのリン酸残基間で脱水縮合したリン酸無水物が得られることが確認できた。しかしながら,3つめのリン酸残基とのさらに無水物を形成した化合物については得られなかった。当初予定していた触媒構造の構築ができていないものの,脱水的アミド化反応を促すと考えられる部分構造についての導入については成功していたため,カルボン酸とアミンとのアミド化反応について検討した。その結果,アミド化反応の進行は低収率ながら進行したものの,十分な触媒活性は確認できなかった。このため,当初予定していた触媒活性を示す構造について,あらためて設計の見直しが一部必要であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前述の「研究実績の概要」で示したとおり,触媒候補分子の合成にあたり問題となる点は,炭素-リン結合の形成によるリン原子の導入法とリン酸無水物結合の形成である。芳香環上へのリン原子の導入には,ニッケルまたはパラジウム錯体を用いたクロスカップリング反応が極めて有効であり,再現性よく中程度の収率で目的物が得られることが確認できている。sp3性の炭素へのリン原子の導入については,有機ハロゲン化物へのトリアルキルホスファイトを用いたアルブゾフ反応を試みたが,立体障害が大きな基質には適用が難しく,反応の進行に伴い副生するトリアルキルホスファイト由来の生副生成物との分離が困難であった。したがって,アルブゾフ反応によるリン原子の導入には,立体障害の比較的小さな基質にのみに適用できることを確認できた。一方,ジアルキルホファイトに塩基を作用させることで調製した金属試薬による求核置換反応については,温和な条件でのリン原子の導入が可能である。しかしながら,複数のリン原子を基質に一度に導入する場合については,反応中間体のリン隣接位の炭素-水素結合の酸性度が上るため,この部分での脱プロトン化に伴う副反応が進行することが明らかになった。このように生じた副生成物は極性が高く,目的物も同程度の極性をもつため,シリカゲルクロマトグラフィーによる分離が難しく,量的供給に課題を残している。以上のように問題点があるものの,これら3つの方法を使い分けることで,炭素-リン結合の形成によるリン原子の導入については実現することができている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに,我々は炭素-リン結合の形成によるリン原子の導入については成功しているものの,リン酸無水物結合の形成については有用な方法論を確立するに至っていない。これは,有用な反応剤や反応条件の検討がさらに必要であるとともに,リン酸無水物結合の化学的安定性が十分に判明できていないことから,適切な反応後の処理や精製方法が見いだせていないことにある。加えて,触媒候補分子として当初,想定していたリン酸無水物の構造に立体的な歪が生じているため,リン酸基間での無水物結合が形成しにくいといった要因も考えられる。前者の問題点については,既知のリン酸無水物と我々が合成を試みている化合物との化学的安定性をNMRによる比較実験によって明らかにすることで,適切な後処理方法や精製方法を確立していくことを予定している。後者の触媒候補分子の構造上の問題については,結合長や結合角を変化させた分子の合成をあらたに実施することや活性エステル型の有機リン酸化合物の合成も視野に入れ,研究を行う。
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