2023 Fiscal Year Research-status Report
NMR/MRI analyses of the dimer of alpha synuclein under physiological conditions and drug development
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23K06082
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
武田 光広 東京薬科大学, 薬学部, 講師 (90508558)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉永 壮佐 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 講師 (00448515)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 認知症 / NMR |
Outline of Annual Research Achievements |
神経細胞内において、αシヌクレイン(αSyn)蛋白質が凝集して生じる可溶性オリゴマーは、強い神経毒性を示し、レヴィ小体型認知症(DLB)の発症要因となる。αSyn の凝集制御に基づいた認知症の予防・治療戦略を確立するためには、可溶性オリゴマーの構造やその創薬標的としての妥当性を明らかにする必要がある。本課題では、αSyn のダイマーを形成する制御化合物をスクリーニングした後、それら制御化合物の生理環境における薬効を、In-cell NMR と MRI を用いて評価する。申請者が新たに調製法を見出した αSyn のダイマーを対象として、NMR 構造解析を行い、蛍光共鳴エネルギー移動等を利用して同ダイマーの形成を制御する化合物を探索することを目的としている。 今年度は、試験管内において毒性を有するオリゴマーの生成する方法として、大腸菌を利用して調製したモノマーのαSynを、特定の界面活性剤と浸透圧調整物質を含む条件下でインキュベーションすることで、過去に報告例のない安定なダイマーが得られることを見出した。生成した同ダイマーについて構造解析を進めるため、13C、15N 標識した αSyn のダイマーを調製して、主鎖原子の化学シフト解析を行い、1次配列上におけるαヘリックスおよびβストランドの領域を同定することを計画した。生成したダイマーは、その一部を介して分子間相互作用をしつつも、他の部分は運動性の高いランダムコイル状態にあると予想される。前者の分子間相互作用領域については、横緩和が早いがシグナルが分散するのに対し、後者のランダムコイル了領域は運動性が高いがシグナルの分散が小さいと考えられる。そのため、分子量25kDaのTycC-TE蛋白質を対象として、高分子量測定に向けた測定とランダムコイルに適した測定を併せて、高磁場NMR測定に向けた測定の基盤体制を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、試験管内におけるαSynのオリゴマーの生成、および生成したaSynオリゴマーのNMR構造解析にむけたNMR解析体制の構築を目標としていた。 オリゴマー生成条件の検討については、界面活性剤と浸透圧調整物質を利用することで、過去に報告例のないaSynダイマーの生成する条件を見出した。本条件では、界面活性剤は膜構造を模倣し、さらに浸透圧調整物質も加わることで、細胞内においてαSynが細胞膜と相互作用する疑似的環境が形成されている。そのため、生成したダイマーは、実際に生体内で生成するαSynの毒性オリゴマーと類似した性状を示すことが期待される。 NMR構造解析については、高分子量タンパク質等の横緩和の早い蛋白質の主鎖NMR連鎖帰属に重宝されるTROSY法を中心とした一連の測定に加えて、シグナルの分散が低い領域においても連鎖帰属を実現する、測定法のセットアップを進めた。測定対象として、分子量25kDaのTycC-TE蛋白質について、TROSY法を利用した測定を行い主鎖連鎖帰属を行った。 以上より、オリゴマー生成およびNMR構造解析とも当初の予定通り進んでいる状況であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
生成したaSynのオリゴマーのNMR構造解析を実施するためには、mM オーダーのダイマーの試料を確保する必要がある。そのため、aSynモノマーのインキュベーション条件の最適化を行い、確保できるダイマーの量の向上を図る。0.1 mM 300 ul のダイマーを得るため、10 mg のaSynモノマーのインキュベーションを行い、0.4 mg 以上のダイマーが生成することを数値目標とする。そのため、界面活性剤の濃度、浸透圧調整物質の濃度、インキュベーション時間、インキュベーション温度を変化させて値の増減を調べる。目標値の aSyn ダイマーが得られたならば、NMRによる主鎖の連鎖帰属を行い、モノマーのシフト値と比較することで、構造形成領域、分子間相互作用領域を同定する。
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Causes of Carryover |
今年度は13C, 15N標識したaSynの調製のため、13Cグルコース、15N塩化アンモニウムの購入を予定していたが、非標識体を用いた検討に注力し、安定同位体標識したaSynの調製は実施しなかった。そのため、当初の予定に比べて実際に使用した消耗品費が少ない結果となった。一方で、情報収集のため、生化学会等の学会参加費用が増えたが、全体として使用額が少なかった。次年度は、13C、15N標識したaSynの調製を行い、その際に繰り越した額を使用する予定である。
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