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2023 Fiscal Year Research-status Report

自然免疫の記憶におけるエピゲノム制御機構

Research Project

Project/Area Number 23K06095
Research InstitutionTohoku University

Principal Investigator

布施 直之  東北大学, 薬学研究科, 助教 (80321983)

Project Period (FY) 2023-04-01 – 2026-03-31
Keywords自然免疫 / 免疫記憶 / 遺伝子発現 / エピゲノム制御 / ショウジョウバエ
Outline of Annual Research Achievements

基本的な免疫機構である自然免疫には、長年、免疫記憶の仕組みが存在しないと考えられてきたが、近年、様々な生物で「自然免疫の記憶」が確認されている。しかし、そのメカニズムは未だ不明な点も多い。本研究は、ショウジョウバエを用いて、ゲノム、エピゲノム、トランスクリプトームを統合的に解析することで、「自然免疫の記憶」のメカニズムを明らかにすることを目的とした。
私達は、ショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)を用いて免疫記憶を検出する実験系を構築した (Fuse et al., PLOS Genet, 2022)。ショウジョウバエにMicrococcus luteus(ルテウス菌)を感染させ訓練しておくと、その後、Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)を2次感染(本感染)させた後の生存率が有意に上昇することを見出した。すなわち、ルテウス菌は生ワクチンのように作用し、ショウジョウバエの感染抵抗性を増強していると考えられる。この実験系を用いて、私達はRNA-Seq解析を行い、免疫記憶における遺伝子発現制御を解析した。データベースの検索から、訓練によって本感染時の発現が上昇する遺伝子の発現制御にAda2bが関与する可能性が示唆された。Ada2bは、ヒストン修飾を制御するSAGA複合体の構成因子であることから、エピゲノム制御がショウジョウバエの免疫記憶に関与する可能性が示唆された。本研究では、Ada2bやSAGA複合体の役割を解析し、免疫記憶において免疫情報がどのようにエピゲノム情報に変換し、どのように遺伝子発現を制御するのか、明らかにする。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

Ada2bの変異系統やノックダウン系統で生存率を測定したところ、ルテウス菌による訓練効果が検出されないことを見出した。このことから、Ada2b遺伝子は訓練による生存率の上昇に必要であることが示された。訓練によって本感染時の遺伝子発現が上昇する遺伝子について、Ada2bの変異系統における遺伝子発現をRT-qPCRによって測定した。いくつかの遺伝子(例えば、抗菌ペプチドをコードするDrosomycin遺伝子)では変異による影響が見られなかったが、いくつかの遺伝子(例えば、プロテアーゼをコードするCG33462遺伝子)について、変異系統では野生型系統と比較して発現が上昇することが観察された。この発現上昇は、訓練+本感染の条件だけで観察され、他の条件では観察されなかった。このことは、Ada2bが訓練+本感染による遺伝子発現の上昇を適切なレベルに制御していることを示唆している。さらに、組織特異的なノックダウンから、機能する組織を検討した。ヘモサイト(哺乳類のマクロファージに相当)におけるAda2bのノックダウンによって、訓練による生存率の上昇が観察されなくなり、CG33462遺伝子の発現がコントロール系統と比較して上昇した。このことは、Ada2bがヘモサイトで機能することを示している。また、本感染後の黄色ブドウ球菌の菌量に対する訓練効果を調べたところ、事前のルテウス菌の訓練によって黄色ブドウ球菌の菌量が抑制された。この訓練依存的な本感染菌の抑制は、Ada2bの変異系統でも、ヘモサイト特異的なノックダウン系統でも野生型系統と同様に観察された。このことは、病原菌を排除する免疫応答は事前の訓練よって増強されるが、この免疫増強にAda2bが関与しないことを示唆している。むしろ、Ada2bによる適切な遺伝子発現制御は、病原菌に対する個体の耐性を増強しているのかもしれない。

Strategy for Future Research Activity

現在、SAGA複合体の構成因子についても、免疫記憶への関与を検討中である。また、遺伝子発現制御の網羅的な解析のために、変異系統やノックダウン系統でのRNA-seq解析も計画している。これらの解析から、Ada2bやSAGA複合体が制御する遺伝子発現の全容を明らかにする。
SAGA複合体は、ヒストンH3のK9やK14のアセチル化に関与することが知られている。SAGA複合体によるエピゲノム制御が自然免疫の記憶に関与しているのかもしれない。組織特異的なクロマチン構造を簡便に解析する手法として、ショウジョウバエではTargeted DamID法(TaDa法)が知られている。この手法では、目的タンパク質(例えば、クロマチン因子)に大腸菌由来のDNAメチル化酵素(Dam)を付加した融合タンパク質を組織特異的に発現し、目的タンパク質のゲノム上の局在をDNAのメチル化の足跡として刻む。メチル化DNAを制限酵素によって切断し、切断したDNAを次世代シーケンサーで網羅的にシーケンスすることによって、目的タンパク質のゲノム上の局在を同定する。この手法を用いて、免疫記憶におけるクロマチン構造の変化と、SAGA複合体の役割を解析する。
私達は、別のアプローチから、免疫記憶に関与する遺伝子を同定するために、ゲノムワイドQTL解析を行った(Tang et al., Front Immunol, 2022)。多数の系統について、訓練効果とゲノム配列との関連を統計的に解析することで、訓練効果に関与する候補として80遺伝子を同定した。これらの遺伝子が自然免疫の記憶に関与する可能性がある。今後、これらの遺伝子の役割についても検討し、自然免疫の記憶における新規のメカニズムを探索する。

Causes of Carryover

当初の予定よりも購入した試薬の費用が安価だったため、残額が発生した。次年度に追加の試薬の費用として使用する予定である。

  • Research Products

    (3 results)

All 2023

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results,  Open Access: 2 results) Presentation (1 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results)

  • [Journal Article] Re‐recognition of innate immune memory as an integrated multidimensional concept2023

    • Author(s)
      Tang Chang、Kurata Shoichiro、Fuse Naoyuki
    • Journal Title

      Microbiology and Immunology

      Volume: 67 Pages: 355~364

    • DOI

      10.1111/1348-0421.13083

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Journal Article] Neural control of redox response and microbiota-triggered inflammation in Drosophila gut2023

    • Author(s)
      Fuse Naoyuki、Hashiba Haruka、Ishibashi Kentaro、Suzuki Takuro、Nguyen Quang-Dat、Fujii Kiho、Ikeda-Ohtsubo Wakako、Kitazawa Haruki、Tanimoto Hiromu、Kurata Shoichiro
    • Journal Title

      Frontiers in Immunology

      Volume: 14 Pages: 1268611

    • DOI

      10.3389/fimmu.2023.1268611

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Presentation] Genetic dissection of innate immune memory in Drosophila2023

    • Author(s)
      C. Tang, C. Okamori, R. Okaji, K. Hirai, S. Kurata and N. Fuse
    • Organizer
      5th International Symposium on Trained Immunity
    • Int'l Joint Research

URL: 

Published: 2024-12-25  

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