2023 Fiscal Year Research-status Report
The role of microsomal PGE2 synthase-1 in mental disorder induced by social defeat stress.
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23K06172
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Research Institution | Hokuriku University |
Principal Investigator |
松尾 由理 北陸大学, 薬学部, 教授 (10306657)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 社会的ストレス / プロスタグランジンE2 / うつ病 / 脳炎症 / PGE2合成酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、社会的ストレスによる精神疾患と脳炎症の関係を明らかにすることを目的としている。即ち、マウス社会的敗北ストレスモデル(SDS)を用い、病態誘導型プロスタグランジンE2(PGE2)合成酵素であるmPGES-1に注目し、ストレス後の精神障害への寄与を明らかにする。mPGES-1 mRNAは、1日、4日間、10日間のSDSにより前頭前野において発現誘導し、特に4日間のSDS(SDS4)で有意かつ顕著に増加した。SDS1では扁桃体、視床下部、腹側被蓋野において、SDS4では扁桃体においても増加傾向がみられたが、SDS10では顕著な誘導は見られず、海馬においてはいずれの期間でも発現増加しなかった。そこで、SDS4の前頭前野でのmPGES-1の発現細胞を同定するため、各種細胞マーカーとmPGES-1の免疫二重染色を行ったところ、内側前頭前野の神経細胞においてmPGES-1の発現誘導がみられ、ミクログリアやアストロサイトでは見られなかった。前頭前野神経細胞にて誘導したmPGES-1の役割を明らかにする目的で、mPGES-1欠損型マウス(ES1KO)を用いて、社会回避性、運動量と前頭前野でのPGE2産生量を検討し、野生型マウス(WT)と比較した。SDS4、SDS10での社会回避性に、遺伝子型での大きな違いは見られなかったが、SDS10での運動量はWTで大きく減少したのに対し、ES1KOでは有意に高い値を維持した。また、SDS4でWTの前頭前野では有意なPGE2増加が認められたが、ES-1KOでは増加しなかった。以上より、社会的ストレスにより、前頭前野神経細胞でmPGES-1の誘導を介してPGE2が産生し、これが、ストレス後の運動量低下に寄与すると考えられた。本研究より、mPGES-1のストレス後の役割が明らかになれば、難治性うつ病への進展予防・治療における新展開が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウス社会的敗北ストレスモデル(SDS)モデルは、攻撃する白マウスと攻撃される黒マウスのそれぞれの個体差により、結果がばらつきやすいため、白マウスの攻撃性をある程度統一できるよう、沢山のマウスから選び出す必要があった。また、mPGES-1の誘導やPGE2産生については、一般的モデルである10日間のSDS(SDS10)で検討したが、顕著な誘導やPGE2産生が認められなかったため、SDS1~SDS4と時間を振って検討をすることになり、出だしに時間を要した。しかし、SDS4で顕著なmPGES-1誘導とPGE2産生が認められたため、SDS4~10の前頭前野での脳炎症について、また、SDS4~10の不安やうつ様行動について、さらに検討する予定である。SDS1、SDS4、SDS10のいずれにおいても海馬でのmPGES-1の誘導は認められなかったため、前頭前野に的を絞って検討を行うこととした。前頭前野神経細胞で誘導すること、これがPGE2産生や運動量減少に寄与することを明らかに出来たので、さらにその役割を明らかにしていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
4日間のマウス社会的敗北ストレスモデル(SDS4)にて、顕著なmPGES-1誘導とPGE2産生が認められたため、SDS4~10の前頭前野での脳炎症について、即ち各種炎症性サイトカインの産生やグリア細胞の活性化などについて、WTとES1KOでの比較検討を行う。また、SDS4~10の不安やうつ様行動についても両遺伝子型間での比較検討を行う。既にSDS10の運動量の減少にmPGES-1が寄与することが明らかになっているため、前頭前野でのPGE2産生から運動量低下につながる機序も明らかにする。神経細胞で誘導するmPGES-1が神経機能に及ぼす効果、グリア細胞に及ぼす効果については、in vitroでの検討も行う予定である。海馬歯状回での神経新生の検討については、海馬でのmPGES-1の誘導が認められなかったため、前頭前野での機能解析に焦点を当てる予定である。また、mPGES-1の阻害薬を用いて、うつ様症状に及ぼす効果なども検討していく予定である。またPGE2の下流機序として、EP3受容体の役割についてもEP3受容体欠損型マウスを用いて検討していく。
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Causes of Carryover |
(理由)社会的敗北ストレスは、最初に適切な強さの攻撃白マウスを選出しないと、極度に攻撃される黒マウスが極度に弱ってしまい、研究を続けられずに安楽死させることとなる場合があった。このため、白マウスと黒マウスの実験に用いる条件を検討するのに、時間を要した。また、一般的な10日間のSDSストレスモデルで、mPGES-1が誘導しなかったため、時間経過を取るなど、条件検討に時間を要した。条件は決まってきているので、次年度に効率的に進める予定である。
(使用計画)本研究では自家繁殖したmPGES-1欠損型マウス、EP3受容体欠損型マウスとその野生型マウスの維持のための床敷きや餌の費用、新たに購入するマウス、ラット等の費用が必要である。また、細胞免疫染色可能な抗体を購入する。グリアマーカーやサイトカイン等のmRNA発現解析のため、primer、mRNA抽出、cDNA作成、qPCRのためのキットを要する。PGE2量、サイトカイン量の測定には、ELISAキットを購入する。In vitro培養実験では、動物の他、各種培養関連器具と試薬の購入を要する。さらに、各種生化学的、分子生物学的、薬理学的試薬の購入を予定している。
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