2023 Fiscal Year Research-status Report
複数薬物による代謝酵素の同時阻害に基づく相互作用リスクの定量的評価
Project/Area Number |
23K06221
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Research Institution | Musashino University |
Principal Investigator |
伊藤 清美 武蔵野大学, 薬学部, 教授 (60232435)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
工藤 敏之 武蔵野大学, 薬学部, 講師 (10584815)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 薬物相互作用 / 代謝酵素阻害 |
Outline of Annual Research Achievements |
代謝酵素阻害に基づく薬物相互作用において、単独では阻害が弱い阻害薬でも多数併用されると相互作用が増強し、有害事象が生じる可能性が懸念される。本研究では、代表的な薬物代謝酵素について、複数の阻害薬が併用された場合の基質薬の体内動態への影響を定量的に評価する。これまでに、代表的な薬物代謝酵素CYP3A4に対する「弱い阻害薬」に焦点を当て、それらが複数併用された場合の影響をモデル解析により評価した。薬物相互作用データベース (ワシントン大学 DIDB) に阻害定数が登録されている「弱い阻害薬」を複数併用した場合の基質薬の血中濃度上昇率を推定した結果、「弱い阻害薬」の中でも阻害作用が比較的強い薬物を複数併用した場合は、相互作用が増強される可能性に注意を要することが示唆された。現在は、CYP3A4に対する「中等度の阻害薬」について、酵素に対する可逆的阻害だけでなく時間依存的阻害も考慮し、同様の検討を実施している。FDAのウェブサイトにCYP3A4に対する「中等度の阻害薬」として掲載されている12薬物のうち、日本で市販されているものを選択し、インタビューフォームや上記データベースを使用してin vitro代謝阻害定数、臨床投与量での血中薬物濃度等の情報を収集した。今後、それらの薬物が複数併用された場合の酵素活性の変動について解析を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
文献調査等による情報収集に時間を要し、学会や論文等で公表できる成果を得ることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
FDAのウェブサイト等においてCYP3A4の「中程度の阻害薬」に分類されている薬物について、in vitro代謝試験により算出された酵素阻害定数、臨床投与量での血中濃度推移等の情報を使用し、それらが単独で投与された場合の酵素活性の低下の程度を見積もる。文献調査において阻害パラメータが得られなかった薬物については、ヒト肝ミクロソーム等を用いたin vitro代謝阻害試験を実施し、阻害パラメータを算出する。 各阻害薬の血漿中非結合形濃度と阻害パラメータを用いて、CYP3A4に対する複数の阻害薬が併用された場合の酵素活性の変動を評価する。さらに、有意な変動の可能性が示唆された阻害薬の組み合わせについて、生理学的薬物速度論(PBPK)モデルを用いて経時的な酵素活性変動のシミュレーションを実施する。
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Causes of Carryover |
今年度は主に文献調査がメインであり、大学で契約しているデータベースを使用することができたため、次年度使用額が生じた。次年度は引き続き文献調査やin vitro試験、学会出張等の費用として助成金を使用する予定である。
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