2023 Fiscal Year Research-status Report
肺腺がん治療を指向した新規カルバゾールアルカロイドの制御系の解析と治療薬の開発
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23K06223
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
松井 卓哉 愛知医科大学, 医学部, 講師 (50238937)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井藤 千裕 名城大学, 薬学部, 教授 (60193497)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | 肺腺がん / カルバゾールアルカロイド / 網羅的解析 / がん細胞増殖抑制 / 細胞死 |
Outline of Annual Research Achievements |
ミカン科Murraya euchrestifolia Hayataから単離・構造決定した新規カルバゾールアルカロイドmurramine Aは肺腺がん細胞株A549細胞に対し細胞毒性(IC50 15 uM )を示し、低濃度のmurramine A添加では細胞増殖抑制を示した。また、ヒト皮膚線維芽細胞(IC50 >25 uM)に対しては細胞毒性を示さなかった。 さらに、murramine Aで処置した細胞において、ミトコンドリア膜電位の低下、カスパーゼ3/7活性の上昇、アネキシンV陽性細胞の増加を認めた。アポトーシス関連プロテインアレイ解析では、添加後24時間でリン酸化Aktの低下を認め、添加後48時間でカスパーゼ3、7、p53の増加を認めた。以上のことよりmurramine Aの細胞増殖抑制はアポトーシスによることが示された。 先に記した低濃度のmurramine A添加したA549細胞の細胞増殖抑制は緩徐な進行であり、その過程において細胞内の空胞化が見られた。この経時変化からオートファージーが関連した細胞死である可能性を示した。 新たな肺腺がん治療薬の開発のため、A549細胞に対して天然から単離・構造決定した化合物の抗腫瘍効果も同時に検討している。ミカン科Glycosmis lanceolataから単離・構造決定したアクリドンアルカロイドはヒト乳ガン細胞T47D細胞には有効であったが、A549細胞には効果は示さなかった(Natural Product Research 2024)。これまでの研究で、A549細胞に対してはジヒドロアントラセノンvisminone F (Planta Medica 2017), ナフトキノンzeylanone、maritinone (Natural Product Research 2017)が細胞増殖抑制を示すことを明らかにしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
A549細胞をヌードマウスの皮下にxenograftしてmurramine Aを投与し抗腫瘍効果を検討するため、in vivo実験に必要なmurramine Aの合成を依頼した。その合成品についてはHPLCによる純度検定およびNMRにより天然物との構造比較を行った。また合成品の生物活性についても、A549細胞の細胞増殖抑制のIC50で比較検討し、単離・同定した天然物と相違がないことを確認した。 天然由来のmurramine Aで処置したA549細胞のマイクロアレイ解析を実施し、web上の解析ソフト(String解析、Panther解析、GSEA解析)を駆使し、変動を認めた細胞内分子の繋がりを解析中である。初年度と次年度の実験の進行は変更しているが、概ね予定通りに進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
A549細胞をヌードマウスの皮下にxenograftし、一定の腫瘍塊を形成させた後に合成したmurramine Aを投与し、腫瘍塊の体積、体重を逐次測定する。投与終了後、血液の生化学検査、心臓、肝臓、腎臓の病理変化を観察し、murramine Aの全身へ影響を検証する。腫瘍塊についても病理学的、分子生物学的、生化学的アプローチで組織内の変化を観察する。 Murramine A処置した細胞溶解液をiTRAQ試薬で標識し、プロテオーム解析を実施する。マイクロアレイ解析の結果を含めて時間軸に沿って、murramine Aによって誘導される緩徐な細胞死に関わる細胞内分子動態を解析する。同時に天然から単離・構造決定した他の天然有機化合物についてもA549細胞を含む種々のがん細胞に対する抗腫瘍効果を検討し、新たな肺腺がん治療薬の開発を目指す。
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Causes of Carryover |
当該年度は、xenograftしたヌードマウスに投与する実験を施行するために必要なmurramine Aの合成および次年度の実験に必要な消耗品に多くを使用した。そのため次年度使用額が生じた。次年度は、合成品murramine Aを用いてxenograftのin vivo実験を開始する計画であり、ヌードマウスなどの購入に使用する予定である。
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