2023 Fiscal Year Research-status Report
リポソームからの腫瘍組織選択的薬物放出亢進技術の構築ならびにその治療への応用
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23K06227
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Research Institution | Kobe Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
大河原 賢一 神戸薬科大学, 薬学部, 教授 (30291470)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河野 裕允 神戸薬科大学, 薬学部, 准教授 (60732823)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 薬物放出トリガリング / リポソーム / ニオソーム / 抗がん剤 / 膜融合 |
Outline of Annual Research Achievements |
リポソームは優秀なDDS製剤の一つではあるものの、血中での高い薬物保持能が仇となり、腫瘍組織に移行したリポソームからの薬物放出も充分ではなく、期待されているほどの抗腫瘍効果が得られないケースが散見されている。そこで本研究では、パクリタキセル(PTX)内封PEGリポソームとある種のニオソームとの相互作用に着目し、PEGリポソームからのPTXの放出トリガリングを試みるとともに、両者の相互作用の実体に関して評価を行った。空のニオソームをPTX内封PEGリポソームに添加することでPTX放出率の劇的な向上が見られ、その効果は添加直後の短時間に発揮されることが示された。さらにその効果はSpan80ニオソームよりもSpan85ニオソームで有意に高いことが明らかとなった。更にFRETの結果より、PTXの放出トリガリングの背後に存在するメカニズムとして膜融合が一部関与していることが示唆された。Span80とSpan85の骨格中にはそれぞれ1個、3個の二重結合が存在していることから、これらニオソームの有する高い膜流動性がリポソームとの膜融合を惹起し、内封PTXの放出トリガリングに繋がったものと推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目に予定していた項目が概ねすべて実施出来、順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
本技術の効果を最大限に発揮できる条件(PEGリポソームの脂質組成、表面電荷、ならびにニオソームの投与量(あるいは添加量)の探索を行い、技術の最適化を図る。さらにこれら一連の検討を、通常の粒子径 約 100 nm で調製した PEGリポソームおよびニオソームに加えて、粒子径数十 nm にて調製した両製剤についても行うことで、本研究にて標榜する戦略の成果に及ぼす粒子サイズの影響も併せて評価する。尚、本検討においては、出来るだけ多くの条件における結果を正確かつ定量的に比較するために、まずはシンプルな系である in vitro 実験を中心に実施する。
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